TOP MAGAZINE熱視線 ー夢追い人ー 株式会社雨風太陽 代表取締役 高橋博之 都市と地方をかきまぜる

株式会社雨風太陽 代表取締役 高橋博之
都市と地方をかきまぜる

僕は死ぬのが怖い。死ぬ時にもっと色々やっておけばよかったと後悔することがあると、死への恐怖が増幅してしまうので、いつその時がきてもいいように貪るように生きたいと思っています。子どもたちへの最大の教育は大人の背中を見せることだと思うので「あの人挫折も多いけど、楽しそうだな」っていう背中を見せたい。漫然と生きながらえる人生にはしたくないんです。

貪るように生きたい。
漫然と生きながらえるような
人生にはしたくない。

政治家から事業家に転身した異色の経歴を持つ、株式会社雨風太陽の
代表取締役 高橋博之さん。産地直送通販「ポケットマルシェ」や食べ物付き情報誌
「食べる通信」などの同社サービスに込めた熱い想いを、たっぷりと語ってもらった。

Text_YUKI KATORI.
Photographs_HIDE NOGATA.

PROFILE

高橋博之
高橋博之(たかはしひろゆき)

1974年岩手県花巻市出身。代議士秘書等を経て岩手県議会議員を2期務める。東日本大震災があった2011年、被災地復興のため岩手県知事選に出馬するも落選し、政界を引退。2013年NPO法人東北開墾を立ち上げ、食べ物付き情報誌「東北食べる通信」を創刊。日本全国、台湾にも展開。2015年株式会社雨風太陽(旧株式会社ポケットマルシェ)を立ち上げ代表取締役に就任。

〝出合い頭の事故〞で、
政治家から事業家へ転身

エネルギーの塊のような人だ。政治家から事業家に転身し、「都市と地方の分断」という社会課題にビジネスから真っ向勝負。その活動の原点は生まれ育った環境にあるという。

「理不尽なことに対して『おかしいじゃねーか』って言いたくなる性分は子どもの頃からです。姉が知的障害者で差別の目に晒されてきたせいもあります。人はなぜ生まれるのか、人生で何を成さなければいけないのかをずっと考えてきました。その明確な答えは分からないけれど、50年間生きてきた結果が、今の〝高橋博之〞で、その問いに対する一つの答えだとは思っています」

そんな性格からか、ジャーナリストを志した時期もあったそうだ。

「新聞記者になりたくて、でも挫折して、『思い通りにならないなら、その流れに身を委ねて、今やりたいことを全力でやろう』と思ったら、人生の歯車が回り始めたんです。人生は〝出合い頭の事故〞の繰り返しで、コントロールできないんですよね。政治家をやめてから事業家になろうと思ったのも出合い頭の事故で、2011年の地震の被災地で若い起業家に出会って、凄い刺激を受けたんです。脈略のない人生かもしれませんが、振り返ると無駄なことは一つもなかった。人生は目的探しとも言いますが、私は目的が自分をみつけてくれた気がしています」

都市と地方が抱える
課題解決への秘策

高橋さんが導かれた人生の目的は「都市と地方をかきまぜる」だ。

「今、〝食〞が蔑ろにされていて、生産者が食えなくて廃業する人が増えています。この現状を変えたくて、都会の消費者と地方の生産者を直接つなぐ、食べ物付きの雑誌『食べる通信』と、産直通販『ポケットマルシェ』を始めました。生産者の顔が見えると正当な値段で評価してもらえるようになり、生産者も誇りを持って仕事ができるようになります」

このサービスには、実は隠れたメリットもあると高橋さんは話す。

「昔は地方から大量に若者が集まり、既存の都市住民と混ざり化学反応が起きて活力になりましたが、今は少子化の影響で都会に入る若者も減り、化学反応が起きにくい。いわば、都市も引きこもりのような状況です。ならば、今度は一極集中する都会から地方に飛び込めばいい。都会の人にとって自然と向き合って暮らす農村や漁村はもはや異世界です。でも、その異世界に暮らす人と触れ合えれば視野が広がって人生は確実に豊かになります。ただ、都会の人は地方の人とのかかわり方が分からない。そこで我々のサービスがパスポートになって、気軽に行き来できるきっかけになればとスタッフみんなで奮闘しているんです。これまでは都会に住むか、地方に住むかの二者択一でしたけど、両方のいいとこ取りをすればいい。10年以上活動してきて東京の一極集中も過疎も止まらず無力さを感じることもありますが、国も二地域居住を推進し始めているので、我々民間も協力して、流れを大きく変えていきたいと思っています」

 

  • 岩手県議会議員選挙に向けて活動中の高橋さん。県議は計2期を務めた。岩手県議会議員選挙に向けて活動中の高橋さん。県議は計2期を務めた。
  • 多忙でも産地巡りは欠かさないという高橋さん。そのネットワークは日本全国隅々にまで及ぶそうだ。多忙でも産地巡りは欠かさないという高橋さん。そのネットワークは日本全国隅々にまで及ぶそうだ。

能登を支援する「ポケマル炊き出し支援プロジェクト」での炊き出しの一場面。
能登を支援する「ポケマル炊き出し支援プロジェクト」での炊き出しの一場面。


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※2024年11月5日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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