アスリートが輝く瞬間をとらえた作品で注目を集め、世界のスター選手からも
支持されている田村 大さん。活躍の背景には、アスリートとして競技に打ち込んだ
自身の経験と、バスケットボールを通じて培った「目標達成志向」があった。
Text_YUKI KATORI. Photographs_HISHO HAMAGAMI.
PROFILE

田村 大(たむらだい)
1983年、東京都生まれ。大学卒業後、桑沢デザイン研究所を経て、バスケットボール用品メーカーや似顔絵制作会社に勤務。2016年、ISCAカリカチュア世界大会で総合優勝を果たし、翌2017年に独立。アスリートの躍動感をダイナミックに描くスタイルを得意とし、八村 塁氏やステフィン・カリー氏をはじめとするNBA選手のほか、野球、サッカー、テニスなど幅広い競技のアスリート作品を手掛け、国内外で高い評価を受けている。2025年には東京都港区の増上寺で、創建以来初となる画家としての個展を開催。
バスケットボールで磨いた
目標達成志向
作品を一目見れば、「あ、この絵見たことある」と記憶がよみがえる人も多いだろう。アスリートの躍動感や情熱を、圧倒的な迫力で描き出すアーティストの田村 大さん。そのダイナミックな表現力の原点には、自身が青春を捧げたバスケットボールがあった。
「高校ではインターハイベスト8、大学では主将を務めるなど、プロも視野に入れていました。だからこそ、夢をかなえて第一線で活躍するアスリートには、リスペクトがあります。僕にとって彼らはスーパーヒーローです。アスリートに限らず『カッコいい』と思う人を描きたい。その思いはずっと変わりません」
作品に宿る熱量は、そうした敬意の表れでもある。そして、バスケットボールが田村さんにもたらしたものは、表現の原点だけではなかった。「身長は170センチ。競技をするには恵まれた体格ではありません。全国から集まる実力者の中で、どうすれば生き残れるのか。そればかりを考えて、戦略を立ててきました」
勝つために考え抜く姿勢は、やがて「目標を達成する力」となり、ボールをペンに持ち替えた後も大きな武器となっていく。
巧みな戦略で
NBAのスター選手も魅了
選手の道を断念した田村さんは、大学卒業後、もう一つの夢だった「絵で生きる」ことを決意する。似顔絵制作会社で約3万人を描くなど経験を積みながら、独立への足掛かりとして掲げた目標が、ISCA※カリカチュア世界大会での優勝だった。
「今まで積み上げてきたものを組み合わせ、自分が一番力を発揮できる場所で勝負しようと考えました」
その言葉どおり、過去の優勝作品を徹底的に分析し、戦略を練り上げる。3度目の挑戦となった2016年、ついに世界一の座をつかみ、翌年には独立を果たした。次なる目標は、世界最高峰のプロバスケットボールリーグ・NBAとの仕事だった。
当時、世界的に有名なアーティストでもInstagramのフォロワー数は、2万人ほど。一方、NBA公式アカウントのフォロワーは3千万人を超えていた。「バスケットボールファンに作品を届ければ、自分のことも知ってもらえる」そう考え、NBA選手を描いた作品を英語で発信し続けた。その戦略は見事に的中し、フォロワーは10万人を突破。やがて、NBAスター選手本人も作品を目にするようになり、NIKEのジョーダンブランドとのオフィシャルコラボレーションも実現した。こうして見ると順風満帆な歩みに映る。しかし、本人は静かに首を振る。
「うまくいかないこともたくさんあります。今も、自分の道を探しながら草をかき分けて進んでいる感覚です」
それでも歩みを止めることはない。目指すのは作品を見ただけで「あの人の絵だ」と世界中の誰もが分かるアーティストになることだ。
「あの時の作品が良かったとは思われたくないんです。今の作品が自己ベストであり、次に描く作品はそれを超えていたい。毎日、自己ベストを更新していきたいと思っています」
Memorable Words
絵を描くことは戦い。
アスリートのように真剣勝負で挑んでいます。
絵を描くことは楽しいかと聞かれたら、その感覚はありません。むしろ戦っている感じなんです。いろいろな人に見ていただく瞬間が喜びです。会社を設立した時の理念は「絵を通じて夢のような時間を提供する」ということ。僕が人を描く時は、その人も気づかないカッコ良さを、絵を通して伝えたいと思っています。
国内外の企業とのコラボレーションを手掛ける。伊藤園「お~いお茶」との企画では、ドジャース・大谷翔平選手が2025年に放った63本のホームランをモチーフに。
作品を通じたトップアスリートとの交流も。ドジャース・山本由伸投手(右)と。

2023年にポルシェとのコラボレーションにより開催した個展では、ポルシェ911の車両に、力強さと躍動感を兼ね備えたアートを施している。