現在日本には、81,000社の神社と77,000寺のお寺が存在する。
その数はもちろん、歴史からみても、神道と仏教は私たち日本人に最もなじみ深い宗教といえるだろう。その神道と仏教が共存した歴史を知ることで、私たち日本人の思想の原点を見ることが出来る。
神と仏が共存する文化に日本人の心をみる
大分県国東半島宇佐地域六郷満山 開山1300年
日本人の柔軟性が神道と仏教を融合させた歴史
古くから私たちの生活に根付き、心のよりどころとなっている神社とお寺。初詣やお宮参り、冠婚葬祭などのほか、その静けさや凛とした心落ち着く空気感で、癒しのスポットとしても人々を引き付け続けている。そんな日本文化の源流にもつながる神社とお寺は、ご承知の通り神道と仏教という、それぞれ異なる宗教であるが、私たちは神と仏の区別をそれほど意識することなく信仰の対象として生活に取り入れ、融和させながら過ごしてきた。これはいわゆる「神仏習合」といわれる信仰だが、このように異なる二つの宗教文化を、1000年以上にわたり共存させている国は世界でも類をみない。もちろん、1868年に発令された「神仏分離令」以降は、神道と仏教は役割の異なるものとして、神社とお寺は別々に運営がされているが、神社に仏像があったり、お寺に鳥居があったりと、「神仏習合」の名残は今も各地で目にすることが出来る。
神道とは、山川草木など自然の生命にも霊的な存在が宿る、いわゆる自然神への信仰を起源とする日本独自の宗教だ。日本人はあらゆるものには生命が宿るという、
一方の仏教は、2500年ほど前に北インドで釈迦(ブッダ)が創始し、中国を経て6世紀ごろに日本に伝来。教祖である釈迦像などをご本尊として、聖典として大蔵経(お経)を唱え、厳しい修行を行うことで悟りを開き来世で救われるという思想を持つ宗教だ。教祖も経典も無く、拝むことで現世での救いを求める神道とは、その由来も思想も大きく異なる。仏教伝来当初は、古来より崇められてきた神道に対して、新たな仏教を受け入れるかで政治的な対立もあったが、もともと明確な戒律や教義を持たない柔軟性のある神道と、体形的な考え方を持つ仏教は、それぞれの特徴をいかしながら、一体のものとして考えられるようになり、仏が神という仮の姿で現れる=権現という考え方なども生まれ、「神仏習合」という、独自の宗教観に結びついていく。この「神仏習合」の日本発祥の地とされているのが、大分県国く にさき東半島といわれている。
外国との交易の窓口であった
六郷満山文化に感じる日本人の思想の原点
1300年の歴史を誇り、現在も観光・巡礼の地としてにぎわう六郷満山。国宝に指定される宇佐神宮本殿や
多様な思想から生まれた神事・仏事も興味深いものが多く、中でも面白いのは「鬼」の存在だ。一般的に悪を表現するものとして使われる「鬼」が、この地では先祖の化身として「福をもたらす象徴」として祀られているのだ。六郷満山の多くの寺院にはさまざまな鬼面が奉納されており、年に一度、旧正月に実施される伝統行事「
それは私たち日本人が、八百万の神という独自の考え方を持ち、四季を楽しみ自然の恵みに感謝し、外来の思想を拒絶せず、どんな時にも「縁」を重視する民族だからこその多様性なのだと思う。「神仏習合」発祥の地 六郷満山には、そんな私たち日本人の民族性や、思想の原点を感じることができる。開山1300年の今、是非この地で、その空気を感じてほしい。
六郷満山開山1300年主要行事
寺院ライトアップ&特別イベント
平成30年10月6日~12月8日
六郷満山の主要寺院で行われるライトアップ。演奏会や神楽奉納などの特別イベントも行われる。寺院毎に内容・開催日時・拝観料がことなるので、事前に確認を。写真は九州最古の木造建築 国宝の富貴寺。
非公開文化財特別公開
平成30年3月1日~6月10日・9月15日~12月9日(土・日・祝日のみ)
独自の文化を育んだ六郷満山には、さまざまな秘仏や文化財が受け継がれている。普段みることのできない知られざる貴重な文化財を、開山1300年を記念し特別に公開。写真は国東市岩戸寺の鬼会面。
特別企画 鬼めぐり鬼朱印
平成30年3月1日~6月10日・9月15日~12月9日(土・日・祝日のみ)
国東半島の寺院には多くの鬼面が保管されている。この鬼面をめぐる開山1300年限定の鬼朱印を用意。13の寺院で授印予定で、鬼朱印 御志納料300円、鬼朱印 御朱印帳は授与寺院にて一部300円で販売。
宇佐国東半島を巡る会
宇佐神宮六郷満山霊場 事務局
大分県国東市国東町小原2721-2
0978-73-0300
http://usarokugo.com/