日本には今、再びバイクブームが訪れている。それを牽引するのは“以前は乗っていたのに事情があってバイクを降りてしまったが、再びバイクに乗ってみよう”という、いわゆる「リターンライダー」だ。
昔と今のバイクブームは何が違うのか?…その理由に迫りつつバイクに乗ることの魅力をあらためて解説。さらにリターンライダーにお薦めのバイクを紹介する。「自由へのパスポート」と言われるバイクで、充実したオフタイムを満喫してはいかがだろうか。
Text_HIROSHI ISHIBASHI. Edit_POW-DER.
楽しみ方が多様化した今こそバイクに乗ろう!
なぜ急にバイクブームが沸き起こったのか?
どうしてリターンライダーが増えたのか?
ここ最近のバイク事情について、リターンライダーの代表でもあるバイク・エディターの石橋 寛さんが語る。
PROFILE
バイク・エディター
石橋 寛さん
クルマ専門誌の編集部を経てフリーランスに独立してからは、専門誌やファッション情報誌などのクルマ&バイクページを担当。数年前にリターンライダーとしてデビューし、大型バイクに乗りつつ、YouTubeなどでバイクの魅力を発信している。
2022年は空前のバイクブームでした。中・大型を問わず二輪免許を取得しようとする人が急増し、各地の教習所では入所の順番待ちや、教習課程に入っても混雑によって卒業まで数ヶ月かかるという現象が起きていました。それに伴ってバイクの販売台数も増加し、人気車種は「納車2年待ち」という事態も!
そのブームを支えているのが、今から20〜30年前にバイクを楽しんでいたけれど、仕事や家庭の事情で降りてしまった人たち…いわゆるリターンライダーです。彼らは年齢を重ね、お金も時間も余裕ができた今、「あの楽しさ、疾走感をもう一度楽しみたい! 出来れば憧れだった大型バイクに乗りたい!」との思いで、大型二輪免許取得のために教習所に通い始めたのです。
若い頃はただバイクに乗って走り回るだけでも楽しかったのですが、リターンする方々は、〝目的〟を組み合わせて楽しむ方が少なくないようです。例えばアウトドアが趣味でバイクでキャンプに出かけるとか、御朱印集めにバイクで寺社巡りをするなど、楽しみ方が多様化しているのが特徴です。基本的にバイクは「個」での活動となるため、行先を選べば道中で誰とも接しないという特性も、コロナ禍の御時世にあっているのかもしれません。
さらに、リターンライダーにとって嬉しいのは、バイクの性能が飛躍的に向上していること。流行りのリッターオーバー(1000cc以上)クラスでもフレンドリーで乗りやすいモデルが目白押しで、たとえ大型の経験が少なくとも安心して走り出すことができるのです。電子制御によるライダーサポートはもちろん、タイヤの進化には誰もが目をみはるはず。こうしたバイクの進化が、今のバイクブームを支えているのは間違いないでしょう。
バイクに乗る楽しみ方が多様化し、その目的に合わせたバイクの選択肢も増えた今、お気に入りのバイクに乗って、新しい人生を謳歌してはいかがでしょうか。
最新バイク事情
Fact 1
最新の電子制御システムがリターンライダーをサポート
ABSやオートシフトなどは当たり前! 最新の大型バイクには左手ハンドルスイッチのボタン操作だけで微速前進を可能とする、リターンライダーには心強いサポートシステムまで装備されているのだ。
快適装備満載!
ホンダが誇る大型プレミアムツアラーには、上記のサポートシステムをはじめとした快適装備が充実している。まさに国内ではライバル不在という孤高の存在だ。タンデム希望のリターンライダーにもお薦めだ。
Fact 2
復刻モデルがリターンライダーの懐古趣味を刺激する!?
リターンライダーの増加を見込んでか、往年のモデルを再解釈して復刻されたモデルが次々と登場。「昔は手が届かなかった」という大人ライダーは、今こそ復刻モデルに乗ってみるのもいいかもしれない。
復刻モデルの象徴
往年のZ1をオマージュし誕生したカワサキZ900RSは、復刻モデルの代表的存在だ。クラシカルな雰囲気にトラクションコントロールやABSなど最新デバイスを装備する、雰囲気も走りも楽しめる一台だ。
Fact 3
2023年のバイク業界はアドベンチャーブームが来る!
2022年のEICMA(ミラノのバイクショー)では、多くのメーカーがアドベンチャータイプの新型を披露。無理のないポジションと豊富な積載量の旅バイクが、2023年に大流行するのは間違いない。
アドベンチャーの人気モデル
スズキVストロームは乗りやすさに加え、ツーリング向けパーツの豊富さで根強い人気を誇るアドベンチャー。また、1050ccを筆頭に250ccまで豊富なラインナップも人気の理由だ。
Fact 4
昔は大人気だった2ストロークエンジン、キャブレターは消滅!?
排ガス規制をクリア出来ず、2ストロークエンジンとキャブレターは消滅。残念ながら新車での購入は出来なくなった。どうしても乗りたい場合には、旧車を探すか、一部の競技用モデルで楽しむことは出来る。
KTMには2ストが健在
競技用ながら、オーストリアのバイクメーカーKTMからは最新鋭の2ストモデルが発売されている。昔よりはるかに洗練されたパワーデリバリーは、リターンライダーも感激するはず。
Fact 5
バイクの世界にも電動化が加速!?
電気自動車の普及と同様、バイクの世界にもEV化の波はじわじわと寄せてきている。ハーレーダビッドソンやBMWといった有名ブランドが次々と電動バイクをリリースしているのが、それを象徴している。
未来を表現するバイク
急速充電器が利用可能など、高い実用性を備えたBMWの電動スクーター。パフォーマンスも環境性能も、SDGsな時代を駆け抜けるに相応しいバイク。シティユースとして賢い選択肢と言えるだろう。
バイク・エディター石橋さんが厳選!
リターンして手に入れたいお薦め輸入バイクカタログ
当時は羨望の的、高嶺の花だった輸入バイク。現在はバリエーションが増えて、多種多様な楽しみ方に合ったモデルを選べるようになった。大人になった今だからこそ手に入れたい! そんな輸入車をバイクエディター石橋さんにおすすめしてもらった!
[SPORTS]
DUCATI Panigale V4 R
純粋なレーシングスピリッツに快楽物質が溢れる!?
バイクのフェラーリといわれるドゥカティのハイエンドモデル。最高出力218PSがもたらす走りは、スーパースポーツバイクの最高峰の名に恥じない。「サーキットでのパフォーマンスに注目されがちですが、数多くの電子制御デバイスのおかげで公道でも苦もなく走れます」と石橋さんはイチ押し。
[SPORTS]
KTM 1290 SUPER DUKE R EVO
大トルク&軽量ボディがスポーツライディングに活きる
1気筒当たり600cc以上のトルクは「“胸がすく”を超越し、視界がとろけるような加速性能」と、スーパーデュークの魅力を語る石橋さん。ツインエンジンを活かしたスリムで軽量な車体はコントロールが容易で、またハンドルやシートの位置が前傾を強いられないため、峠だけでなく街乗りも楽しい。
※オプション装着車
[LUXURY]
BMW R 18
“排気量は正義!”と謳うリターンライダーに絶好の1台
BMWが満を持してリリースしたボクサーエンジン搭載のクルーザー。往年のモデルをオマージュしたクラシカルなスタイリングが人気だ。1.8ℓという排気量は怒涛の加速だけでなく、ジェントルなクルージングも得意。重心位置が低く転びづらいというのも、リターンライダーには嬉しい。
URL:https://www.bmw-motorrad.jp/
[LUXURY]
Indian Scout Rogue
老舗バイクブランド自慢のクルーザーで贅沢なライドを体験
アメリカ最古のバイクブランド、インディアンがつくったラグジュアリーなクルーザー。最新の水冷エンジンは緻密な鼓動をともなって、スムーズでパワフルなクルージングを約束する。一人乗りという贅沢な仕様ゆえ、「孤独に走りを楽しみたい」というライダーにこそ、ぜひ乗っていただきたい
[ADVENTURE]
Harley-Davidson Pan America®️1250 Special
タフネス&スタイリッシュが両立したアドベンチャーバイク
ハーレーダビッドソンが解釈したアドベンチャーバイクは、無骨にして新鮮さをアピール。伝家の宝刀「V型2気筒エンジン」も水冷化され、よくできた足回りと相まって大陸横断すら容易と思わせる仕上がりだ。高い視点と低い重心は、安心感をもたらし、ビギナーでも難なく乗りこなすことができる。
[ADVENTURE]
Husqvarna Motorcycles Norden 901
遥か彼方まで走って行きたい!そんな願いを叶えるバイク
オフロードに定評あるハスクバーナ・モーターサイクルズだけに、勘所をおさえたアドベンチャーが仕上がっている。燃費のいいパラレルツインは、19ℓのタンク容量によってワンタンクで約400kmの航続距離を実現。「優れた燃費性能と、ちょっとした悪路も走破できる足回り&タイヤが長距離ライドに最適」と語る石橋さん。
[URBAN]
TRIUMPH BONNEVILLE T120 CHROME EDITION
上質なブリティッシュバイクで都会を疾走しよう!
オーソドックスなルックスながら、最新の水冷パラツイン、上質な足回り、そして電子制御によるライダーサポートを搭載。同社のアイコンともいえるスタイルは年齢を重ねた大人ライダーに相応しく、「またそんなライダーこそ、このバイクの魅力がわかる筈」と石橋さんは絶賛する。
普通二輪免許で手軽に個性を演出できる輸入バイク
大型バイクでなくとも、リターンライダーが乗るに相応しいバイクはいくつかある。スタイリッシュなネオクラシック系や、操作性に優れたネイキッドモデルなら、気軽に乗りこなせるだろう。
お洒落なライダー御用達
イタリアの名門ブランド、ベネリの人気ネオクラシックモデル。味わい深い単気筒エンジン、所有感を満足させてくれるリッチな仕上がりなど400ccクラスではトップレベルのクオリティが魅力だ。
街も峠も疾走!
312ccの単気筒エンジンならではの軽さと俊敏さ、気持ちいいレスポンス、そしてBMWが誇る完璧なパッケージが魅力。街中から郊外のワインディングまで、躍動感溢れるライディングを気軽に楽しむことができる。