TOP MAGAZINE特集 コロナ禍で激変した別荘・リゾートのニューノーマル

コロナ禍で激変した別荘・リゾートのニューノーマル

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コロナ禍がもたらした、ワーケーションや週末移住、コロナ疎開などといった新たなニーズにより、別荘需要やリゾートサービスが活気づいている。 長い低迷期を脱して、大きな転換点を迎えているといえる別荘・リゾートの現状を探りつつ、その活用方法について改めて考えてみたい。

ポストコロナ時代の
別荘・リゾート事情

多くの企業が少なくない影響を受け苦戦を強いられているコロナ禍のもと、静かに活況に沸く別荘・リゾート業界の最新の動向について、東急リゾート(株)の(もり)(くに)(のぼる)さんにお話を伺った。

PROFILE

東急リゾート株式会社 常務執行役員 営業本部 本部長

(もり)(くに)(のぼる)さん

1990年(平成2年)入社。入社以来営業畑で、新築リゾートマンション・会員権販売、仲介分譲の営業所立ち上げなどを経て、現在は全国13箇所の流通部門の統括責任者を務める。

コロナ発生以前・以降で、業界にはどういった変化がありましたか

 リゾート不動産の売買に関しては、取引が増加しています。特に仲介売買では、都道府県間での移動の制限がなくなった2020年8~12月の期間、別荘やリゾートマンション等の取引件数は、前年比約6割増しとなりました。
これまで、別荘の需要は「余暇を過ごすため」がほとんどでした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、急速に普及した「テレワーク」の拠点、「緊急時の避難所」といった新たなニーズが生まれたことが、増加の一因と推測されます。実際、関東からアクセスのよい、「ワ―ケーション」に適したエリアへの問い合わせが増加しています。

コロナ発生以降、別荘の価格に変化はありますか

 販売に出ている物件の価格が急騰したといったことはありませんが、各エリアで需要が供給を上回り、販売物件数は減少しています。特に軽井沢エリアでは、中古物件の需要が伸び、1億円を超える高額物件を含む新築物件も盛んに取引されています。

リゾート会員向けサービスへのニーズも高まっていると伺いました

 弊社販売・仲介の東急不動産のリゾート会員権「東急ハーヴェストクラブ」においては、昨年7月の緊急事態宣言明け以降、前年を上回るお問い合わせをいただいています。昨年10~12月の問い合わせ顧客数を見ても、対前年同期比約3割増しとなっています。「今回初めてリゾート会員権の購入を検討する」という方も多いですね。
コロナ禍によって、国内のリゾート需要が高まっていることに加え、会員制リゾートの「特定の会員だけが利用する」という点への安心感が、新たな顧客の増加に繋がっていると思われます。客室内やラウンジ等でテレワークをするワーケーション利用のお客様も徐々に増えている印象です。

ニューノーマル時代の別荘・リゾート業界はどのような方向になると思いますか

 ワーケーションなどがさらに浸透して、利用目的の多様化、年齢層、職業層もより広がりが出ると思います。そのため、個々のニーズに適応した新しいサービスや商品が今以上に登場してくるのではないでしょうか。現状大きな打撃を受けている観光業界は、事態改善に向けてワーケーションやリモートワーク用に客室を提供するサービスを始めていますし、個人がホテルの客室を所有し、自分が利用しないときは客室として運用する「ホテルコンドミニアム」というスタイルなども、一層普及する可能性があると考えています。

職場に縛られない働き方の多様化が進んだことで、従来余暇を過ごすための地であった別荘やリゾートが、仕事の場となり、新たなビジネスモデルの拠点となり、そして、定住の地としても検討され始めている。その可能性に、今後も注目していきたい。

ワーケーションの効果・効用はホンモノなのか

Q. ワーケーションをしたことがありますか?

ワーケーションをしたことがありますか?

「ワーケーションをしたことがある」と回答した方に伺いします。
Q.「ワーケーション」のメリットだと感じることを教えてください。(複数回答)

Q.「ワーケーション」のメリットだと感じることを教えてください。(複数回答)

リゾート地や保養地などで休息と仕事を両立させる「ワーケーション」。

リゾート地や保養地などで休息と仕事を両立させる「ワーケーション」。コロナ禍をきっかけにより注目度が増してはいるが、実際にどれほどの効果があるのだろうか。2020年7月に、NTTデータ経営研究所、JTB、JALが連携して行ったカヌチャリゾートでの実証実験では、「仕事のパフォーマンスが参加前と比べて20%程度上昇し、終了後も5日間は効果が持続する」「心身のストレス反応が参加前と比べて37%程度低減し、持続性もある」といった、かなりポジティブな効果が報告されている。

定番から新登場まで
ニューノーマルに注目

大きな転換点を迎えている別荘・リゾートサービス。新たなニーズに対応するべくブラッシュアップされた既存サービスや、新登場のニュービジネスを、具体的にチェックしてみよう。

別荘・リゾートマンション:利用頻度によっては税金の軽減措置も

 コロナ発生以降は余暇を過ごす場所としての利用だけでなく、人混みを避けるための週末移住や緊急避難先として、仕事を兼ねたワーケーションの場として、そして、自分時間を確保するための場所としてなど、新たな活用方法で再注目されている別荘・リゾートマンション。
購入の際は、広さや居室の数だけでなく、生活利便環境や通信環境も重要となるケースもあるため、そこで何がしたいのかを明確にすることで、仲介業者から適切な紹介を受けやすくなり、理想の物件が探しやすくなる。購入時は初期費用に目が行きがちだが、その後のランニングコストがどれくらい負担可能か想定しておく事もポイント。特に、リゾートマンションは浴場やプールなどの共用施設が充実しているのが魅力だが、反面、管理費や修繕積立金が高額になることもあるので、購入前に確認が必要だ。自治体によって細かい条件は異なるが、月に1泊以上の定期的な利用をする場合は、それを証明する書類を提出すれば、「セカンドハウス」としての認定が受けられ、固定資産税等の軽減措置を受けられることも。
また、新たな物件購入のスタイルとして、ホテルの客室を購入しオーナーとなって、使わない期間は「客室」として貸し出し運用することで収入を得る、「ホテルコンドミニアム」も注目だ。

別荘・リゾートマンション:利用頻度によっては税金の軽減措置も

  • 別荘・リゾートマンション:利用頻度によっては税金の軽減措置も
  • 別荘・リゾートマンション:利用頻度によっては税金の軽減措置も

今後さらに注目が高まりそうな「ホテルコンドミニアム」は、沖縄エリアでの人気が高い。そのひとつ、「HIYORIオーシャンリゾート沖縄」は、全室オーシャンビューのスイートルームで、キッチン等を備えたロングステイ仕様だ。

リゾート会員サービス:ニーズの多様化と三密回避で人気上昇中

 会員権を購入すれば、さまざまなリゾート施設を利用できるリゾート会員サービスは、バブル崩壊で再編が進んだが、価格帯やサービスは多様化し、近年は堅調に成長が続いており、コロナ発生以降は、会員専用の施設を専用利用できるため三密を回避しやすいというメリットから、さらに需要が伸びている。
リゾート会員サービスは、対象施設の所有権(共有)を取得する形態と、預託金・入会金を払って利用する権利を取得する形態に大きく分けられる。前者は、所有している間はオーナーの立場が守られるが固定資産税が発生し、後者は前者より割安な傾向だが、償却保証金を伴う場合を除いて減価償却ができない。目的に合った形態を選択しよう。

リゾート会員サービス:ニーズの多様化と三密回避で人気上昇中※完成予想CG

  • リゾート会員サービス:ニーズの多様化と三密回避で人気上昇中

    ※完成予想CG

  • リゾート会員サービス:ニーズの多様化と三密回避で人気上昇中

現在問い合わせが増えているのは、首都圏や関西圏からアクセスの良い施設だそうだ。リゾート会員サービス大手の東急ハーヴェストクラブでは、「熱海伊豆山&VIALA」が特に人気が高いという。熱海という立地の利便性に加え、日本三大古泉「走り湯」と、敷地内源泉の2種類の温泉が楽しめることが人気の理由だ。

NEWサービス:時流に合わせた特色あるサービスが続々登場!

定額で温泉旅館を仕事場に出来る[温泉ワーケーション]
会員になると、提携した温泉旅館内のシェアオフィスが使い放題な他、温泉入浴料の割引、提携飲食店利用割引、空港までの無料送迎、専用コンシェルジュによる旅のサポートなど、さまざまな特典が受けられる。提携温泉宿の第1弾は、佐賀県嬉野の老舗温泉旅館「和多屋別荘」。滞在中は、温泉付きの専用客室に宿泊し、好きな時間に温泉に入れる。今後提携する温泉旅館は、順次全国に展開される予定だそうだ。

  • 定額で温泉旅館を仕事場に出来る[温泉ワーケーション]

    「温泉旅館」こそワーケーションに最適という、新しい提案に注目だ。

初期費用0円の貸別荘運営代行サービス[ベソカシ]
現在33箇所の貸別荘を運営するうやまリゾート(株)が2021年から開始した、貸別荘の運営代行サービス。旅館業法や消防法の基準を満たすための費用、手続きを同社が負担する。初期費用0円からで、契約〜貸し出し開始まで何もすることなく所有する別荘の貸し出しが可能。また貸し出し開始後も清掃管理や貸し出し希望者への受付対応も代行。もちろん、持ち主は希望するときにいつでも自由に宿泊することができる。

  • 初期費用0円の貸別荘運営代行サービス[ベソカシ]

    ベソカシが管理してる別荘の一例。

END
※2022年6月10日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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