伝統を受け継ぎ後世に残す 継ぎ人 匠

継ぎ人 その二十

実直に、飄々と。柔軟な変化の中で変わらぬものを守る

ISSUED | 2018.12

鳳凰軒 三代目 熊倉一郎さん

  • 伝統ジャンル | 中華料理 継 承 歴 | 三代目
  • 1962年東京生まれ。明治学院大学卒業後、1年間の修業を経て23歳で家業である「鳳凰軒」に入る。2012年より3代目を継承。地元住民やサラリーマンにも親しまれてきた味を今に引き継ぐ。

実直に、飄々と。柔軟な変化の中で変わらぬものを守る

「鳳凰(ほうおう)」と書いて「おおとり」と読む。古くから問屋街として栄えてきた浅草橋。この街で長く愛され続けている中華料理店が「鳳凰軒」だ。

「もともと製麺業に従事していた祖父が本郷で開業し、その後この場所に店を構えたのが昭和10年のことです。私が子どもの頃は中華料理のほかにカレーやカツ丼なども出していて、昼食時にはサラリーマンで賑わう街の食堂のようなイメージもありました」。

 そう語るのは三代目の熊倉一郎さんだ。家業を継ごうと決めたのは、大学卒業を目前に控えた頃。それまで店を手伝うことはあったものの、自分が継ぐという意識は全くなかったという。

「父から『人に使われて仕事をするより、小さくても一国一城の主』という話を聞いて、それもそうだな、と。実際に店に入ってみると大変なことも多かったですが、父からは何か指示されたり叱られたりすることはありませんでした」。

 店に立つようになってからは、料理に使う油を控えめにするなど、時代に合わせて柔軟に味を変化させてきた。しかし、その中でも変わらないものがある。祖父の代から受け継がれてきた手打ちの自家製麺だ。

「父の怪我のために麺づくりをやめていた時期もあったのですが、私が店に入った頃に再開しました。やっぱりうちは製麺から始まった店ですから。お互い言葉にしなくても『麺が基本』という気持ちがあったと思いますし、それはこれからも大切にしていきたいですね」。

「店を増やそうとか大きくしようということは考えていません。1日1日コツコツと。それだけですよ」という熊倉さん。何気ないときに思い出して、ふと食べたくなる。そんな中華料理店がここにある。

  • 和

  • 匠の言葉

    「和」
    「昔も今も、家族が団結して仕事をしてきた」と語る熊倉さん。家族の和、お客様との和、地域の和――人のつながりを大切にすること。「それは、先代の父が言葉ではなく姿で教えてくれたことでもあります」。

店舗情報

鳳凰軒

  • 住所 中央区日本橋馬喰町2-5-7▶︎MAP
    電話番号 03-3661-1987
    営業時間 月~金11:00~20:30、土11:00~14:00
    定休日 日祝

    左)30年ほど前に店舗を改築したが看板はそのまま残した。重厚感のある木目が創業当時の面影を今に伝える。
    右)先代からのレシピを引き継ぐ手打ちの自家製麺。寝かせる時間によってコシに変化が生まれるという。

    店の看板メニューである、志那ソバと焼き餃子。透明感のあるストレートの細麺は、ほどよいコシとスルッとした喉越しが後を引く。弾力ある食感が楽しめる餃子の皮も自家製。

    熊倉さんと共に店に立つ母の得代さん。どこか懐かしいようなホッとできる店の雰囲気は、家族の温かさがあるからこそ。

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