TOP TREND EYE 働き方改革で賃金が上がるのか?2023年から実施される時間外労働へ見直しと待遇

働き方改革で賃金が上がるのか?2023年から実施される時間外労働へ見直しと待遇

2023年から実施される時間外労働への施策 -アフルエント

時間外労働の過重や年次有給休暇の低取得率など日本の労働者におけるさまざまな不遇を是正すべく、2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されている。その中で今回注目したのが、2023年4月より改正される時間外労働における賃金率である。このコラムでは、具体的な改正ポイントについて厚生労働省が発表した内容を詳しく紹介していく。

働き方改革の考え方

仕事に対する働き方改革の考え方-アフルエント

働き方改革は、柔軟な働き方を働き手である自分自身が「選択」できるようにするための改革だ。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少している問題が注目される今、従来の働き方とは異なる個々の事情に応じた「働き方の多様化」の実現が求められている。とりわけ人手不足が深刻となっている中小企業においては、魅力ある職場作りを行うことでしっかり人材を確保し、生産性や業績の向上を目指すことが必要とされている。

労働時間の見直しと現行制度の待遇

時間外労働の上限規制を解説-アフルエント

長時間労働という「働きすぎ」を見直すことで多様な働き方を実現するという趣旨から、労働時間が見直されている。例えば、残業時間の上限規制や勤務時間インターバル制度の導入、残業における割合賃金率の引き上げなどが具体的に挙げられるだろう。ここでは、現行制度の状況を整理しつつ、見直しポイントを解説していく。

時間外労働の上限規制について

時間外労働の上限規制(法第36条)における法律で定められた労働時間(=法定労働時間)の上限は、「月45時間・年360時間(=1日2時間程度の残業)」が原則。1日8時間もしくは週40時間内、休日は毎週少なくとも1回、または4週4日以上を与えることとされており、これを超過する場合は労働基準法第36条に基づく労使協定の締結により届出が必要となる。なお、特別な事情がある場合のみ、下記の内容が適用される。

・時間外労働が年720時間以内
・時間外時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・月45時間を超えることができるのは年間6か月まで

基本は上記のように適用されるが、自動車運転業務や建設事業、医師、新技術・新商品の研究開発といった一部の事業・業務には、適用が猶予・除外される場合があることにも注意が必要だ。

フレックスタイム制の拡充

必ず働かなくてはならない「コアタイム」と労働者が選択できる「フレキシブルタイム」を取り入れ、日々の始業・終業時刻や労働時間を調整する。こうした仕事とプライベートの生活バランスを取り、効率的に働くことを目指した制度がフレックスタイム制だ。実際に、労働時間の調整が可能な清算期間が1か月から3か月に延長されたことにより、子育てや介護しながらでも働きやすくなった。例えば、6・7・8月の3か月の中で労働時間の調整ができるため、子育て中であれば学校の夏休み期間となる8月の労働時間を短くすることができる。このように、子どもがいる世帯なら「子どもと過ごす時間」が確保しやすくなるというメリットがある。

残業における割増賃金率の引き上げ

これまで時間外労働に対する割増賃金率は、月60時間内の場合は大企業・中小企業ともに25%だった。そして月60時間を超える残業割合賃金率は、大企業であれば50%、中小企業は25%というのが従来型だ。しかし2023年4月より、この中小企業で適用されていた特例の割増賃金率が撤廃されることが決まっている。これに伴い、中小企業も大企業と同様、月60時間を超過した場合における時間外労働の割増賃金率を25%から50%へと改定される。

労働時間を客観的に把握することを通達で規定していたものの、裁量労働制が適用される人などは通達の対象外だったのが今までの流れ。この場合、時間外・休日労働の割増賃金の支払い義務がかからないため、長時間労働が必然的に発生していた。今回の改正により、すべての人の労働時間状況が適切な方法で把握されるよう、残業が一定時間超えた長時間労働者から申出があった場合は、医師による面接指導を実施することが義務付けられる。

この時間外労働に対する割合賃金率の引き上げは、労働基準法第138条に該当する。しかし、この138条が削除されることにより2023年4月1日以降は、上記に述べた通り「月60時間を超える時間外労働の割合賃金率を50%以上」とする規定の適用を受けることになる。

働き方改革の無料相談窓口

厚生労働省が開設した無料相談窓口-アフルエント

労働者の心労や過労など健康被害が大きな社会問題となっている今、労働者の健康を確保するため時間外労働を抑制する方針として試行された働き方改革。細かな改正ポイントがある中で疑問や不明点が出てきた場合に利用できるのが、厚生労働省が開設した無料相談窓口が「働き方改革推進支援センター」だ。

公式サイトでは、働き方改革のポイントをコラムや動画でわかりやすく紹介しているほか、地域や業種、従業員数など条件を設定した上でさまざまな中小企業の取り組み事例が閲覧できる。また、日本全国に設けた無料の相談窓口がエリアごとに表示され、働き方改革に関する相談ができる支援センターの電話番号(フリーダイヤル)が記載されている。どの世代でも見やすい仕様となっており、高齢者向けに文字サイズが「標準・大・特大」とワンタッチで変更できる細やかなサポートもありがたい。万が一、電話が繋がらない場合は、都道府県労働局や労働基準監督署でも相談支援が行われているので、問い合わせてみるのもおすすめだ。

参考:厚生労働省無料相談窓口働き方改革推進支援センター

※2021年11月23日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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