TOP MAGAZINE特集 未病 それはカラダ からのシグナル

未病 それはカラダ からのシグナル

発行: 最終更新日:

 

【健康とは】からだに悪いところがなく、丈夫なこと。また、そのさま。「健康を保つ」「健康な肉体」
【未病とは】検査を受けても異常が見つからず病気と診断されないが、健康ともいえない状態。放置すると病気になるだろうと予測される状態をいう場合が多い。
【病気とは】生体がその形態や生理・精神機能に障害を起こし、苦痛や不快感を伴い、健康な日常生活を営めない状態。医療の対象。疾病(しっぺい)。やまい。

自分はもちろん、家族のためにもカラダからのシグナルを察知して病気にならない体質をつくる

監修

医療法人 淳信会 理事長

登坂 正子 先生

食生活・栄養素バランスの重要性を唱え、「予防」を軸に診察を行っている。昨年12月に未病患者専門の「ホリスティキュア メディカルクリニック」を中野区に開業。
医師が自身や家族を受診させたい医師を選ぶ、「2014 Best Doctorsin Japan」に選ばれる。日本循環器学会認定循環器専門医、日本抗加齢医学会専門医、米国コロラド州認定栄養学校NTI 認定栄養コンサルタント、医学博士

「未病」対策のキーワードは、ミネラルコントロール

 「未病」という言葉、テレビや雑誌が健康情報を日々取り上げている今日、耳にしたことがある方も多いと思う。「未病」とは、気になる症状はあるものの、病気というほど調子が悪くなく、検査をしても結果にあらわれない状態をさしたもの。逆に検査で前兆程度の数値が出たが何ら症状がない状態も該当し、その言葉通り、「病気未満」の状態をさす。病気はある日突然患うものではなく、「未病」の段階を経て発症するので、いかに「未病」段階で体調をコントロールできるかが、病気にならない重要なポイントになる。

 未病専門クリニックで理事長を務める登坂正子先生によれば、人が体調を崩す大きな原因の一つが、ミネラル栄養素のアンバランスによるもので、「未病」はミネラルの不足、体質に合わないサプリ・健康食品の過剰摂取などによる、ミネラルバラン
スの崩れを知らせるカラダからのシグナルなのだという。ミネラルとは、亜鉛やマグネシウム、鉄といった、カラダを構成する元素のひとつで、代謝機能にかかわる酵素の働きを支える重要な役割を持っている。そのためミネラルが不足すると酵素の働きが低下し代謝機能が落ち、ホルモンなどカラダに必要なものを充分に産生できず、結果体調不良が起こる。

では、なぜミネラルは不足するのか。ミネラルは体内で作り出すことが出来ない栄養素で、飲食によって摂取するが、偏った食事など生活習慣が乱れると、必然的にミネラル不足に陥る。「未病」の原因にはほかにも喫煙、添加物や食材に微量に含まれる有害金属の体内蓄積などもあるが、登坂先生はストレスや加齢による慢性的なミネラル不足にも注意が必要だという。ストレスや加齢で消化酵素の分泌が落ち消化吸収力が低下すると、吸収できる栄養素も減少する。男性の場合、ミネラルと良質なたんぱく質が不足すると、男性ホルモンの生産量が低下し更年期障害を招く恐れがあるそうで、無気力・集中力の低下などの精神的な障害にもつながる可能性があるそうだ。このように、ミネラル不足は結果としてさまざまな体調不良、「未病」の温床になって
いるのだ。

 ウイルスや細菌などによる急性疾患は別として、「未病」が生活習慣の乱れや不摂生、加齢によるミネラルバランスの低下を主原因とするのであれば、食事の内容など、生活習慣を見直すことで克服できることになる。もし今、慢性的な体調不良があ
れば、それを単なる「年齢のせい」などと片付けずに、「未病」のシグナルと考えて対策を講じていきたい。

「未病」のシグナルには、想いもよらない症状がある

敏感に感じ取りたい「未病」のシグナルには、気づかずに見過ごしているものも多いと登坂先生はいう。次の症状はそんな一例だ。

 【気力が出ない】 「未病」と捉え難い症状だが、亜鉛、銅、マグネシウムやカルシウム、リン、鉄、コバルトなどの不足が原因である可能性があり、侮ってはいけないという。
 【怒りっぽくなる】 カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、クロム不足でストレス耐性が下がっている可能性が。「未病」との関連性は高いそうだ。
 【抜け毛・脱毛】 皮膚疾患が原因の場合もあるが、亜鉛・ケイ素・コバルトなどの不足やセレンの過剰が原因の可能性もあり、ミネラルバランスの調整で、脱毛が改善するケースもあるとのこと。
 【太りやすい】 食べ過ぎ・運動不足だけが太る原因ではなく、バナジウム、ヨウ素の不足も一因になるそう。当然、太ればメタボなど生活習慣病のリスクが増えるので要注意だ。

他にも症状は多岐にわたるが、「未病」は「病気」ではないので、正確に診断をすることが難しい。だからこそ、「未病」のシグナルに敏感になり、不調の原因と生活習慣の関連性を気にかけていくことが、健康を維持する秘訣なのだと思う。体質に合った食習慣やライフスタイルを専門家にコーチしてもらうことで、未病ケアは意外と簡単に継続できると、登坂先生はいう。セルフメディケーションが推奨される今、「未病」は今後さらに注目されるキーワードになるであろうことは、想像に難くない。

【睡眠】生活習慣を見直してからだのバランスを取り戻す
「未病」は生活習慣の乱れを知らせるカラダからのシグナル。乱れがちな睡眠や食事の質を見直して、「未病」をおこさないハイバランス体質をめざそう。

老化・肥満・アルツハイマー…睡眠不足が招く「未病」の危険

 まず、上のグラフをご覧いただきたい。これは睡眠時間と死亡リスクの因果関係を調べた研究結果で、睡眠時間は「7時間」より多すぎても少なすぎてもリスクが高まる、という結果をあらわしている。睡眠は最初の3時間でアルツハイマーの原因
物質アミロイドβ(脳の老廃物)などを排出し脳を休め、その後4時間で身体の疲労を回復させると聞く。人は睡眠時に「成長ホルモン」を分泌し細胞の再生、疲労回復を行うが、不十分な睡眠では分泌量が不足し、疲労の蓄積、老化の進行、さらにはアルツハイマーや肥満の原因にもな老化・肥満・アルツハイマー…睡眠不足が招く「未病」の危険り得るのだそうだ。「寝不足で肌が荒れちゃって…」という話をよく聞くが、これには根拠があったわけだ。

また、睡眠時間とともに意識したいのが睡眠の「質」だ。質の高い睡眠は深い眠りを誘い「成長ホルモン」の分泌を促すという。良質な睡眠を得るための、すぐにでも始められるポイントをピックアップしてみた。
■ アロマや音楽を使って、リラックスした状態で眠りに入る
■ 就寝前に強い光を浴びたり、PC・スマホなどを見ない。電気は消して眠る
■ 寝酒、就寝前の深酒・カフェイン摂取は避ける
■ 就寝1時間前を目安に入浴を済ませる
■ 日中にできるだけ身体を動かして、身体を疲れさせる
■ 平日と休日の睡眠サイクルを大きく変えない。
■ 起床後すぐに日光をあびる
これらは質の高い睡眠、規則正しい睡眠サイクルを得るための基本的なポイントだそうだ。

 とかく長時間労働をしがちな日本人は、世界的に見ても睡眠時間が短い。睡眠不足による居眠り・集中力の低下で、事故などを起こしてしまっては元も子もない。睡眠不足による体調不良は比較的意識しやすいので、「未病」を防ぐための一手段として、まずは最適な睡眠時間と良質な睡眠を目指したい。

手軽に高栄養素を補えるスーパーフードレシピ

【1】長州黒かしわのグリル

T抗疲労成分を多く含む山口県の高級ブランド地鶏「長州黒かしわ」のグリル。ミネラル豊富な天然塩とエクストラヴァージンオリーブオイル、パセリでマリネ風に仕上げた、地鶏ならではの旨味と歯ごたえが際立つ、疲れに効く一品だ。
[材料]
長州黒かしわ …………….1パック分
クミンパウダー ………………… 適量
ガーリックパウダー …………. 適量
天然塩 ……………………………… 適量
エクストラヴァージンオリーブオイル ……..大さじ3ほど
パセリ ………………………1カップ分

[作り方]
1.グリルパンに少量のエクストラヴァージンオリーブオイルを塗り、中火で熱する。
2.クミンパウダー、ガーリックパウダー、天然塩を絡めた長州黒かしわを①にのせ、両面を焼きあげる。
3.②をバットに入れ、エクストラヴァージンオリーブオイルを絡め、パセリのみじん切りを散らし、15分ほどおいて出来上がり。

【2】ケールとフリーカのソテーサラダ

カルシウム・ビタミンを豊富に含むケールを、栄養豊富なグラスフェッドバターでソテーし、古代穀物フリーカと合わせることで、味はもちろん、ミネラルの吸収効果を高めたサラダ。リンゴ酢と天然塩の味付けもポイント。
[材料]
ケール ………………………….. 5、6枚
人参 …………………………………1/2本
グラスフェッドバター ………………………..20グラムほど
アップルサイダービネガー(りんご酢) ……………..大さじ1~2ほど
天然塩 ……………………………… 適量
炊いたフリーカ …..1/2カップほど

[作り方]
1.千切りにしたケールと人参をグラスフェッドバターを加えて熱したフライパンに加える。
2.ケールと人参がしんなりするまで炒めて、火を止める。
3.②にアップルサイダービネガーと天然塩を加えて、混ぜ合わせる。
4.③に炊いたフリーカを加えて、出来上がり。
※フリーカはフリーカ1:水2で簡単にお鍋やフライパンで炊けます。

【3】ブルーグリーンアルジー水

ミネラル、ビタミン、アミノ酸など、人に必要な栄養素を網羅する完全栄養食品といわれる天然の藍藻が、この「ブルーグリーンアルジー」。デトックスやアンチストレス効果が高いので、仕事中にイライラしてしまった時や集中力が切れた時などに、お茶感覚で飲むのがおすすめだ。
[材料]
ブルーグリーンアルジー……… 小さじ1/3
水 ……………………………….500ml ~
レモン輪切り …………………. 適量

[作り方]
水にブルーグリーンアルジーを溶かし、レモンを加える。

※材料は全て2人分目安

スーパーフードを取り入れて「未病」知らずのカラダをつくる

 「更年期障害は、過去の食や生活習慣のリアクション」。そう語るのは、スーパーフードを活用したレシピを提案している、スーパーフードクリエイターのWOONINさん。加齢によって減退した食欲や消化吸収力の低下などで、バランスの崩れた体内ミネラルをいかに効率よく取るか。ストレスや仕事上の付き合い、残業など、とかく生活習慣が乱れがちな毎日を過ごす方々でも、手軽に、そして確実にミネラルを摂取できる、そして何より、「食べる」楽しみも十分に味わえる、そんなスーパーフードを取り入れた、「未病」対策になるレシピをWOONINさんに紹介してもらった。

 【スーパーフードとは】 日本スーパーフード協会による定義は、「栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品であること。 あるいは、ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品」となっている。アサイー・ココナッツオイル・チアシード・ユーグレナカカオなどもスーパーフードの一種で、低カロリー高栄養素でアンチエイジングはもちろん、生活習慣病の予防にも効果的と言われている。

監修

スーパーフードクリエイター

WOONINさん

ローフード教室「R.A.W」主催のほか、雑誌や書籍でのレシピ考案やスタイリング、企業の商品開発など、活躍の場を広げ活動中。近著「まいにちスムージー100」(主婦の友社)が好評発売中
サイト: www.woonin.jp
Instagram:@woonin_lifestyle

END
※2021年11月30日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

others