旅行は観光からウェルネスツーリズムへ
最近、旅というものの概念に変化を感じる。
かつて「旅行」といえば、名所観光、美味しい食事、買い物などが主流だった。
団体旅行などで、同じ場所に行き、同じものを食べ、お土産を買って帰る、といったパターン。一人旅の楽しさを知る者なら、自分でオーガナイズできる楽しさももちろんあるが、基本的には観光・食事・買い物が旅行のメインパターンだったように思う。
大きな変化をもたらした要因はいくつかあるだろうが、私が思う最大の要因は、やはりテクノロジーの発展だろう。SNSなどの発達により、個人のクチコミや経験など、ガイドブックには載らないような情報まで簡単に入手することができるようになった。Google Mapに滞在場所近くの素敵なレストランを聞けば、ローカル行きつけの店まですぐに発見できてしまう。
また、海外であっても、ホテルや施設の予約もインターネットで楽々。団体旅行や旅行代理店に頼らずとも、自分の望む旅行プランを自身でコーディネイトすることは、今ではさほど難しい話ではない。それに応じるように、旅行代理店においても、個人的なニーズを満足させられるような様々なオプションを用意し、より自分好みの旅行プランにカスタマイズしていく事が一般的になっている。
そんな中、旅行の目的が、見るだけの「観光」から、自分自身が行動の中心となるような「体験」にシフトしていく事は、自然な流れのように感じられる。
そして、現代の流れは「体験」から派生し、自身の体と心を見つめなおす旅、「ウェルネスツーリズム」へと、さらなる変化を続けている。
日本のウェルネスツーリズム
日本のウェルネスツーリズムといえば、真っ先に浮かぶのは「温泉」だろう。
古くは湯治として体の療養のためにと長期滞在客も多かったが、近年はほとんどが一泊二日と短く、豪華な食事を満喫、といったイメージが施設・滞在客ともに定着してしまっている。
温泉にはもっとウェルネスツーリズムを盛り上げる可能性があると私は思っている。
入浴だけではなく、飲食だけではなく、より深い心身のリラクゼーションを感じられるサービスとの相性も良い。
現在は国をあげ、「新・湯治」として、温泉と他業界のシナジーを狙った取り組みも多くなってきている。
ウェルネスツーリズムの先進国・スイス
「ウェルネスツーリズム」とは、広義として、ウェルネス=健康とウェルビーイング(心身が健やかな状態にあること)に焦点を当てた観光形態のことである。体と心の健康を向上させることを目的とし、施設などに滞在しながら、リラクゼーション、フィットネス、スパ、ヨガ、食事、自然療法、精神的な安定などを行う。
私が最も関心を持つウェルネスツーリズムの形は、医療先進国に趣き、メディカルチェックや栄養指導、フィジカルトレーニング、フェイシャル&ボディトリートメント等を受ける滞在型ウェルネスツーリズムである。自分の体、心の状態を再認識し、滞在しながら癒していく、そして、日常生活においてどのように過ごしていけばより良いウェルネスにつながるか、運動指導や栄養指導などのアドバイスを受けることができる。
特にスイスはウェルネスツーリズムの先進国と言われており、スパリゾートや山岳地帯でのウェルネス体験を提供する施設が多く存在する。アルプス山脈や湖沿いのリゾートで、大自然に包まれながら自然療法やリラクゼーションが行えるのだから、ひときわウェルネスな旅を味わうことができそうだ。
中でも、レマン湖近く位置する「クリニック・ラ・プレリー」は90年以上の歴史を持つ世界有数の滞在型メディカルスパである。世界中からセレブが集まってくるという、噂の超高級サロン。
次回からは、「クリニック・ラ・プレリー」での経験を中心にお届けする。
春日 郁代(かすが いくよ)
Spa~Nursery Japan オーナー
一般社団法人日本インターナショナルセラピスト協会 理事長
CIDESCO認定インターナショナルエステティシャン
CIBTAC認定スキントリートメント/ボディマッサージ
日本エステティック業協会(AEA)認定インターナショナルエステティシャン、認定講師
公務員を経て、大手エステサロンに勤務。2年後に店長となり、全国売上1位店に押し上げる。
その後京都にてサロンを開業し約35年にわたり経営。
アロマティックスキンケアブランド「Nursery」をはじめ、長年培った美容経験と女性の感性に寄り添って立ち上げた多様なビューティー商品は、アメリカ、中国、UAE他、世界中で販売・愛用されている。
また、スパアナリストとして、世界各国のスパを調査、コンサルティングを行う。
ワールドレベルの美容サービスの在り方を考え、世界に通用する美容従事者の育成とジャパニーズビューティーの国際的普及を目指し、日々アクティブに邁進している。
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