TOP TREND EYE 【連載:旅するウェルネス】第2回:ドバイ・ザビールサライの中東ターキッシュハマム

【連載:旅するウェルネス】第2回:ドバイ・ザビールサライの中東ターキッシュハマム

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世界一の観光都市、ドバイ

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皆さんは、今一番注目されている世界一の観光都市はどこかご存知だろうか?

世界最大の旅行プラットフォーム・トリップアドバイザーが発表した
「2023 トラベラーズチョイス ベスト・オブ・ザ・ベスト」。
https://www.tripadvisor.jp/TravelersChoice-Destinations-cPopular

旅行者の評価内容と件数が反映されるこの賞において、
2022年、2023年と世界1位に輝いたのは中東、アラブ首長国連邦のドバイなのである。
2021年に開催されたEXPO2020 DUBAIなど、近年話題に事欠かないドバイ。

エミレーツ航空の直行便は、東京から2便、関西から1便、毎日運航している。約11時間のフライトではあるが、深夜のフライトと時差マイナス5時間の時差により、動き出すのに最適な時間に到着できる仕組み。
当日夕方頃までオフィスや自宅で過ごし、空港へ。深夜便でシャンパンとキャビアを楽しみ、ゆっくり過ごした後、飛行機から降りればドバイは早朝なのである。
ファーストクラスにはシャワー付き個室も存在しており(2023年4月現在はエアバスのみに設置)、飛行機では眠れない!という方でなければ、おすすめのフライトスケジュールだ。

現に、私が出展していたドバイ展示会にお越しいただいた日本からのお客様には、2泊4日の弾丸スケジュールでドバイを満喫されたツワモノも。

そんなドバイでのビジネスをスタートし、今年で6年になる。日本とは全く異なるライフスタイルや商習慣、そして、世界のハブとして、ヨーロッパ、アジアなど世界中の人や物が集まるドバイは、私のアンテナを刺激し、新たなアイデアの種を見つける場としても役立っている。
年間3~5回、ドバイを往復している私にとって、旅とビジネスの疲れを癒す場所。それはやはりスパなのである。

市街地で味わえるリゾートスパ気分(タリス・オットマンスパ)

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ドバイでスパを受ける最大の利点は、ドバイという、交通の便が良く移動に困らない小さな街(都会)の中にありながら、モルディヴなどのリゾートスパに引けを取らないほどのファシリティの充実にあるだろう。

中でも、設備が素晴らしく、さらに中東らしさを感じさせてくれるスパが、ジュメイラ・ザビールサライにある『タリス・オットマンスパ』である。

https://www.jumeirah.com/en/rejuvenate/dubai/jumeirah-zabeel-saray/signature-talise-ottoman-spa

ジュメイラ・ザビールサライは、世界のセレブが別荘を構える人工島・パームジュメイラの左翼に位置し、アラビア湾に面した美しい5つ星ホテルである。オスマン帝国時代の宮殿をイメージし、壮大な豪華さを表現した高級ホテルだ。
タリス・オットマンスパが名前に冠する「オットマン」も、この「オスマン帝国(オスマントルコ)風」の意味である。足を置くスツールが有名な訳ではないので念のため。
その名の通り、トルコ風ハマムを中心に、ジャグジー、スティームサウナ、ドライサウナ、アイスルームなど、充実の設備を有している。そして、設備だけではなく、ハマムの伝統的なデザインや、ウェイティングルームにも趣きがあり、美しい。異国情緒を随所に感じながらも穏やかな空気の流れる空間づくり、照明も素晴らしい。

中東のスパ施設「ハマム」とは

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日本人にはまだあまり聞き慣れないかもしれない「ハマム」。中東や北アフリカの伝統的な入浴方法のひとつで、古代ローマ時代から受け継がれ、アラブ文化の発展と共に確立されてきた。
特徴的なのは、湯気の立ち昇る、湿度の高い石造りの室内で行われるところ。

まずは、つるつるした温かい石のベッドに横たわり、垢すりからスタート。程よい温度のスティームサウナに入りながら全身をケアしていくような感覚だ。お湯で流したあと全身を泡で洗ってくれるのだが、モコモコの泡を作る光景がとにかく楽しい。木綿袋に空気を入れてブンブン振り回す!大量の泡を最初に作り、全身に置いていく。重くキメの細かい泡が体を包み込む。

日本にも江戸時代には、銭湯で背中を洗ってくれる「三助さん」なるサービスが存在していたが、現代ではその文化はほぼ残っていない。他人に体を洗ってもらう事に抵抗を感じる方もいるかもしれないが、まるで子どもに戻ったような気持ちになり、私は好きだ。

泡を流してから全身をハニーパック。肌に対する保湿効果や抗炎症作用も期待されているハチミツは、塗布するとじんわりと温かみを感じられる。
ハマムでトリートメントを受けながら見上げる天井。イスラム教のモスクのような、モザイクタイルの壮大な天井は、中東というエキゾチックな雰囲気をより高めてくれる。されるがまま全身を磨き上げられていると、まるでクレオパトラのような贅沢気分。
パックの放置時間に、腕にトルコカラーのミサンガを巻いてくれる。私はお土産的なプレゼントなのかな、と思っていたが、「作業済の印じゃない?」との説も。ロマンのある方で考えておこう。
トルコ人、フィリピン、インドネシア、タイ、アフリカ等多彩な人種がハマムに従事している。

ハマムの後は、リラクゼーションルームにてトリートメントの前にひと息休憩。ラバンという甘くないヨーグルトジュースの酸味が、ハマムの湯気でふわふわとした気分に爽快感を与えてくれる。

タリス・オットマンスパの設備事情

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各国のスパを見ていく中で、必ずチェックするところがある。
豪華な施設、リーズナブルな施設、それぞれ違いはあれど、存在するもの。
それは、ロッカールームである。
着てきた洋服、貴重品を保管する大事な場所だ。高級ホテルになればさぞ…と考えるが、案外落とし穴が多いのも事実。

ロッカー:○、でも難あり
有名スパであっても、ロッカーは省スペースを狙ってか上下2段に分かれている所が多い。2段式になると、ワンピースやパンツなど、丈の長い洋服は裾が折れ曲がってしまう。その点、タリス・オットマンスパでは素敵なブランド服から着替えるセレブも多いはずなので、1段式のロッカーを採用しているのはさすが。
ただし、ここに日本人ならではの難点が。
日本人女性の平均よりはわずかに高いはずの私の身長。
それでも、このロッカーの吊り下げフックに手が届かない…!
毎回、「うーん!」と背伸びをし悪戦苦闘、何とかハンガーをひっかける始末。私よりチビッコの当店スタッフはどうしたらいいんだ!なんて、文句を言いたくもなるが、スタイルの良い欧米女性には無縁の悩みかもしれない。
背の高いロッカーは高評価ではあるものの、残念なマイナスポイントは内棚。
通常、履いてきた靴はロッカー内に収納する。Tシャツやカバンなど内棚に平置きしたいものもあるはずだが、内棚が設置されていないため、外履き靴の上に直置きしなければならない。吊り下げの高さに気を配ったロッカーなのだから、もうひとつ配慮があればより良くなるだろうに。

室内着:△
ロッカー内に配備されているバスローブと施設内移動用のビーチサンダルも改良の余地がある。
バスローブは凹凸のある織り目の生地で、肌への密着度が少なくやさしい着心地ではあるが、洗い古されていて、さらには紐がねじれたままでたたまれている。高級なスパでの洗練された体験に、使い古されたバスローブはなんともみすぼらしくミスマッチだ。
また、ビーチサンダルは袋にパッケージされておらず、使い捨てなのか使いまわしなのか判別しにくい。もし使い捨てサンダルを採用しているのであれば、結束バンドなどで左右つながった状態で提供してくれた方が安心感がある。

細かな点ではあるが、こういった微細に渡り配慮をしているかどうかで、スパのホスピタリティや品格というものは試されるように思う。

ちなみに、「ドライヤーはダイソンに変えたの!」とセラピストが笑って自慢していた。

セラピスト、レセプショニスト

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スパで初めてゲストを迎える顔となるのが、レセプショニストの存在。高級スパであるタリス・オットマンスパにも当然、レセプショニストが配備されている。
ドバイでは国籍ごとに就ける仕事がある程度決まっており、接客業に長けているフィリピン人を配置するスパが少なくないが、タリス・オットマンスパは欧米系のレセプショニストを置いている。たまに弾丸のような喋り口の者もいるが、概ね品格のあるエレガントな対応を心掛けているのはさすが5つ星ホテルのスパというところ。

イスラム教の国らしく、レセプションの段階で男女が分かれており、男性ゲストには男性セラピストが、女性ゲストには女性セラピストがそれぞれ施術を行う。

セラピストはボディやフェイシャルトリートメントだけではなく、ハマムも担当している。さっきまでハマムで体を洗ってくれていた者が、服装を変えてトリートメントルームではセラピストとして登場。
顔なじみのアフリカ人セラピストが不在だったため、今回ははじめてのインドネシア人に担当してもらう。国籍により、手のひらの質感が全く異なるのも面白いポイントだ。素肌に触れる「セラピスト」という職業にとって、タッチの感触というのは非常に重要な要素である。日本人の持つ、うるおいのあるキメの細かい手の質感は、実はそれだけで大きなアドバンテージを持っている。

タリススパにはタイ人、インドネシア人、アフリカ人などが在籍しており、それぞれの出身国の資格を持つこともあるが、CIDESCOなど世界基準のライセンスを持つ者はいないようだった。
資格だけがすべてではないが、高級ホテルや豪華客船などのクルーズスパにおいては、CIDESCO、CIBTACといった国際的なエステティック機関のディプロマホルダーはそれだけで信用の証となる事もある。ぜひ海外で高級スパを受ける際には、セラピストが持つ資格について問い合わせてほしい。恐らくはそのスパで一番の技術者を担当につけてくれるはずだ。

中東らしさを感じられる老舗スパの貫禄

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画像出典:Trip Advisor

新しいホテルが次から次へと濫立しているドバイにおいて、中東らしさを感じられるスパは少しずつ失われてきているように思う。ジュメイラ・ザビールサライおよびタリス・オットマンスパは、ドバイにおいては老舗にあたるホテル・スパだが、世界唯一の7つ星ホテル「バージュアルアラブ」のタリススパと比べても、赴きと解放感においてはこちらの方が上手のように感じる。

タリス・オットマンスパはジュメイラ・ザビールサライに宿泊していなくても予約は可能。それでも、できるだけスケジュールは長めに確保しておき、ゆったりとした滞在時間を過ごしていただきたい。
イスラム教の地としては当然、プールやハマムは男女別だが、トリートメントルームはカップルで使えるプライベートルームがあるので、カップルで癒しの時間を過ごすのにも最適だ。
もちろん、宿泊してパームジュメイラで1日を過ごすのも、最高の時間になることは間違いないだろう。

今回受けたメニュー:
タリスハマム ロイヤルオットマン(タリスシグネチャー) 60分
バリニーズマッサージ 90分

プロフィール
■筆者プロフィール
春日 郁代(かすが いくよ)
株式会社ヒューマンリソースコミュニケーションズ 代表取締役
Spa~Nursery Japan オーナー
一般社団法人日本インターナショナルセラピスト協会 理事長

CIDESCO認定インターナショナルエステティシャン
CIBTAC認定スキントリートメント/ボディマッサージ
日本エステティック業協会(AEA)認定インターナショナルエステティシャン、認定講師

公務員を経て、大手エステサロンに勤務。2年後に店長となり、全国売上1位店に押し上げる。
その後京都にてサロンを開業し約35年にわたり経営。
アロマティックスキンケアブランド「Nursery」をはじめ、長年培った美容経験と女性の感性に寄り添って立ち上げた多様なビューティー商品は、アメリカ、中国、UAE他、世界中で販売・愛用されている。
また、スパアナリストとして、世界各国のスパを調査、コンサルティングを行う。
ワールドレベルの美容サービスの在り方を考え、世界に通用する美容従事者の育成とジャパニーズビューティーの国際的普及を目指し、日々アクティブに邁進している。
https://hrc.inc/

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※2023年10月3日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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