フォーシーズンズ香港でゆったりスパ&フェイシャル
前回にひきつづき、香港のお話を。
ローカルの粥と足つぼで、クオリティはさておき現地の空気にふれた私だが、ここからが本題。今回のスパは香港駅近くのフォーシーズンズ香港である。
フェイシャルコースの前にスパエリアの利用のため、1時間ほど早めに到着。
フォーシーズンズ香港は、エントランスロビーから気持ちの良い吹き抜けの空間が迎えてくれる。
レセプションの案内もスマートだ。そういえば、電話で予約の確認を行った際も、とても聞き取りやすい英語での対応に驚いた。私の耳には香港のカントニーズ(広東語風)イングリッシュはどうも聞き取りにくく、たとえ高級レストランのソムリエであっても「??」ということが多数。単純に発音や言葉が流暢というだけでなく、シンプルで伝わりやすい言葉を選んでいるのか、そういう部分でも各国の宿泊ゲストを多く迎えているフォーシーズンズは流石といったところ。
ちなみに、どれだけ高級なスパであっても、基本的に私は全て自費で支払う。スパアナリストとして自由な意見を持つためにも、正しい金銭感覚のもとでコストパフォーマンスをチェックするためにも、重要な事であると考えているからだ。
ファシリティチェック
恒例の、ファシリティチェック。
ちなみに、私はスパを訪れる際はほぼ自腹で決済をしている。
こういう職業をしていると、どうしても招待などで呼ばれることもあるのだが、私としては、自分の経験や審美眼をもって感じたことを自由に伝えたいと常々思っている。
ロッカー:〇
2段式なので長いコートやワンピースの場合は折れてしまうけれど、靴をしまうエリア、小物用の引き出しなどうまく配置されている。
「上下の段、どちらが良いですか?」と希望を聞かれるものの、上段はやっぱり配置が高すぎるため、下段しか選択肢の無い日本人。
バスローブ:◎
いままでに着用したバスローブの中でも上位に入る着心地の良さ。
外側がサテン、内側がふんわりとした風合いのコットンになっているため、とにかく肌ざわりが心地良い。
浴室スリッパ:△
黒のビーチサンダルはおそらく使い回しであろうもの。
水着:◎
スパ慣れしている私は、もちろんどこの国に滞在するにも水着を必ず持っていく。日本人はうっかり忘れがちだが、スパ(浴場)は水着着用である。
今回同行したスタッフMは水着をもっておらず、レセプションに相談したところ、彼女にディスポーザブル(使い捨て)の水着を提供してくれた。ディスポーザブル水着を用意していないスパも多いので、皆さまお気をつけて。
このディスポーザブル水着が、大爆笑!
どんなサイズの方も着られるように、という気遣いの表れか、どこもシェイプしていないフォルム。言うなれば、ゴワゴワした大きなシャワーキャップを身体に被せているような感覚。身につけた姿は、まるでナスビかアボカドの着ぐるみを来ているよう(着ている姿を撮影したかったが流石に断られた)。
良いのです、なんでも「おもしろい」が優勝。
思えば数年前に彼女と訪れたスパでは、ストッキング生地のディスポーザブル水着(ビキニ)を着用し、恐ろしい水圧のジャグジーに水着を吹き飛ばされていたっけ。M×香港スパ×水着=笑いの方程式。
ジャグジー、サウナ(ドライ、スティーム):◎
設備としては申し分なしの広々とした空間。全体的に清潔感があり、スタッフも随時バスタオルなどを補充しに巡回している。身なりもキチンとしており、動きにそつがない。
リラクゼーションルーム:○
こちらも、リクライニングできるリラクゼーションチェアが6台。全てテレビもついている。4種類のお茶やフルーツ等も充実。しかしながら、多くのスパでいつも思うのは、サーブするポットが重すぎること。滑って落としそうで心配。なんであんなに重いポットにするんだろう。
フォーシーズンズひと筋のキャリア15年セラピスト
ドイツのスパでも体験した、「BIOLOGIQUE RECHRCHE」の手技とマシンを使用したフェイシャルコースをオーダー。
パリのブランドであるが、ひとりひとりの肌状況を考え、セラピストが最適な組み合わせを選択し施術を行う。リモデリングマシンと手技の組み合わせで肌の深部からアプローチし、リフトアップを実感できる。
今回のセラピストはインドネシア人。聞けば、セラピストとして15年、フォーシーズンズひと筋で施術を行っているそう。
イギリスがベースの国際セラピスト資格である「ITEC」を取得しており、技術も申し分ない。「ITEC」はイギリスの文部省・労働省に認められたセラピストの試験諮問機関であり、イギリスのみならず世界各国にオフィスを置き、「CIDESCO」「CIBTAC」等の資格とともに、リクルートにも有利になるといわれている、ハイレベルの資格である。
また、彼女の手のタッチが素晴らしい。
セラピストは、その手でゲストの素肌にふれる仕事。そのため、手から感じる質感やエネルギーはダイレクトにゲストに伝わってしまうものである。
世界各国のセラピストの手に触れてきたが、アジア人の手(肌の質)は他の地域に比べ、リラクゼーションを与える手を持つ者が多い。中でも日本人セラピストの手は世界でも稀なやわらかさとキメの細かさを持ち合わせている。持ち前の真面目な気質もあり、技術もしっかり学んだものが多いため、勇気をもって世界に飛び出せば、必ず評価されるはずだ。
東南アジア女性の家事労働者
余談として。今まであまり出会うことがなかったのだが、ハイブランドの並ぶ香港駅や中環駅の周辺広場に集う、東南アジア人女性たちの集団。「アマ(住み込み家事労働者)」として働く彼女たちは、休日は食事を持ち寄り1日を過ごしているそう。
日本ではごく一部のセレブ特権のような印象だが、香港では一般家庭においても家事労働者を雇用することは珍しくない。現に、フォーシーズンズスパのセラピストはアマを雇っていると話していた。
日本における、「家のことは全て自分たちで」、という旧時代からの考え方。キャリアを諦める働き盛りがまだまだ多いのも事実。
今の香港の状況が最適解であるかどうかはわからないし、課題も多そうだ。しかし私としては、才能ある人が社会において存分に力を発揮できる環境づくりの、ひとつのアイデアになると感じている。
春日 郁代(かすが いくよ)
Spa~Nursery Japan オーナー
一般社団法人日本インターナショナルセラピスト協会 理事長
CIDESCO認定インターナショナルエステティシャン
CIBTAC認定スキントリートメント/ボディマッサージ
日本エステティック業協会(AEA)認定インターナショナルエステティシャン、認定講師
公務員を経て、大手エステサロンに勤務。2年後に店長となり、全国売上1位店に押し上げる。
その後京都にてサロンを開業し約35年にわたり経営。
アロマティックスキンケアブランド「Nursery」をはじめ、長年培った美容経験と女性の感性に寄り添って立ち上げた多様なビューティー商品は、アメリカ、中国、UAE他、世界中で販売・愛用されている。
また、スパアナリストとして、世界各国のスパを調査、コンサルティングを行う。
ワールドレベルの美容サービスの在り方を考え、世界に通用する美容従事者の育成とジャパニーズビューティーの国際的普及を目指し、日々アクティブに邁進している。
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