TOP MAGAZINE特集 これが江戸前鮨の原点立ち食いで、粋に楽しむ

これが江戸前鮨の原点
立ち食いで、粋に楽しむ

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遡ること200年前。100万人都市江戸に暮らす江戸っ子たちは、さっと食べられる屋台の立ち食いを好み、特に「にぎり鮨」の人気は高かったという。
そんな江戸前鮨の原点とも言える立ち食いスタイルの鮨店がいま、活況だ。
美味い鮨を食べたい。しかしコースを食べるほどの時間はない。かといって回る鮨は避けたい…。
そんな忙しくも欲張りな現代人に、立ち食い鮨はぴったりとフィットする。
老舗や高級店のセカンドラインや新形態の店など、続々と登場する店にふらりと立ち寄り、 職人が丁寧な仕事を施した旬のネタを気ままに味わい良い頃合いでさっと店を出る。
200年前と変わらぬそんな江戸っ子スタイルを、粋に楽しんでみるのはいかがだろうか。

※掲載した金額はすべて一貫の税込金額です。仕入れ状況により価格変動や品切れの可能性があります。

Edit&Word_NOBUYUKI YAMAHA. IKUMI UENO (effect).
Photographs_RYOMA YAGI. MASAMI OHIRA.

鮨 銀座おのでら 登龍門
[銀座]

鮨 銀座おのでら 登龍門 [銀座]

[コハダ]
シャリと同じ赤酢で〆たコハダを3日間寝かせて提供。丁寧な仕事を加えて旨みを引き出す、これぞ江戸前鮨の真骨頂だ。380円。

本格高級鮨を江戸前の流儀で味わう

高級江戸前鮨の名店が多く軒を連ねる、銀座。その地で、舌の肥えた客を唸らせてきたのが「鮨 銀座おのでら」だ。国内外に店舗を展開し、そのうちの2店舗でミシュランを獲得している。そんな「鮨 銀座おのでら」が2022年4月にオープンさせたのが、立ち食いスタイルのセカンドライン「鮨 銀座おのでら 登龍門」である。

セカンドラインといえどもさすがの高級感を漂わせる店内。この日、つけ場に立っていたのは総本店での修行を経た小林航大氏だ。「お客さまに育てていただく鮨店」をコンセプトに掲げ、後進育成のために開いたこの店で鮨を握るのは、小林氏を含めた手子(てこ)と呼ばれる職人の見習いたち。その勉強代として、本店と変わらないネタを1/4程度の価格で提供しており、オープン以来多くの人に親しまれてきた。

コースはなく好きなものを1貫から頼める。さっと店に立ち寄って好きなネタだけを味わう。そんな江戸前流が楽しめる、立ち食いスタイルの名店だ。

[中トロ] 黒いダイヤモンドとも称される大間産の本マグロを使用。3種の酢をブレンドした存在感のあるシャリともよく合う必食の一品。660円。

[中トロ]
黒いダイヤモンドとも称される大間産の本マグロを使用。3種の酢をブレンドした存在感のあるシャリともよく合う必食の一品。660円。

[穴子] とろけるような身と、皮のもちっとした食感が特徴的な煮穴子。穴子の骨を半日かけて煮込んで作るツメが、濃厚な旨みを与える。550円。

[穴子]
とろけるような身と、皮のもちっとした食感が特徴的な煮穴子。穴子の骨を半日かけて煮込んで作るツメが、濃厚な旨みを与える。550円。

[真鯛] 塩をふり2日間熟成させることで、ねっとりとした食感と旨みが生まれる明石産の天然真鯛。すだちの酸味がアクセントに。350円。

[真鯛]
塩をふり2日間熟成させることで、ねっとりとした食感と旨みが生まれる明石産の天然真鯛。すだちの酸味がアクセントに。350円。

「銀座おのでら」の名を背負い、日々鮨に真剣に向き合う小林氏。この店の注目株だ。

「銀座おのでら」の名を背負い、日々鮨に真剣に向き合う小林氏。この店の注目株だ。

鮨 銀座おのでら 登龍門

住所:東京都中央区銀座5-14-17 銀座USB1F

電話番号:050-3204-0718

営業時間:16:00~22:00 (フード21:15LO、ドリンク21:30LO)

休業日:不定休

立喰い寿司 あきら 築地店
[築地]

[白えび] 昆布の上に寝かせることで余計な水分を抜き、味を凝縮させた白えびの昆布〆。口いっぱいに旨みが広がる看板メニューだ。380円。

[白えび]
昆布の上に寝かせることで余計な水分を抜き、味を凝縮させた白えびの昆布〆。口いっぱいに旨みが広がる看板メニューだ。380円。

良いものを気軽に。大将の“粋”があふれる名店

鮨を握る手つきはしなやかで美しい。完成した鮨がつけ台に置かれるまで目が離せない。そんな仕事をみせてくれるのが、白金の名店「鮨龍尚」の主人で、「立喰い寿司あきら」を立ち上げた田島尚徳氏だ。

コンセプトは、旬のネタに丁寧な仕事が施された本当に良い鮨を、その日の気分で好きなだけ味わえる店。本店と同じように田島氏自らが毎朝、市場で目利きしたネタを提供する。田島氏がつけ場に立つことも多く、品質は本店と変わらないが金額は1/3程度。評判は瞬く間に広がり、人気店となった。ランチとディナーともに、入店時に一括してオーダーをする仕組み。追加注文はできないため、店舗インスタグラムに投稿されるその日のネタを見て、心を決めてから入店することをおすすめする。

田島氏が立ち食い鮨を開業したのは、コロナ禍で苦境に立たされた仲買い業者の「手助けをしたい」という思いも強かったという。生き方そのものが粋な田島氏の握る鮨は、ファンの胸を日々熱くさせている。

[うに] 利尻産の蝦夷バフンうに。甘みが強く、濃厚な味わいが印象的だ。海苔を丸く巻くのではなく、片側がぴんと張った姿も粋。1,650円。

[うに]
利尻産の蝦夷バフンうに。甘みが強く、濃厚な味わいが印象的だ。海苔を丸く巻くのではなく、片側がぴんと張った姿も粋。1,650円。

[クエ] 6日間熟成させることで驚くほど旨みが増し、ぷりっとした歯ごたえになる長崎県産のクエ。一度食べたら忘れられない名品。660円。

[クエ]
6日間熟成させることで驚くほど旨みが増し、ぷりっとした歯ごたえになる長崎県産のクエ。一度食べたら忘れられない名品。660円。

[マグロの赤身] 青森県大畑産のマグロを使った赤身漬け。薬味にはワサビではなく、和ガラシを使い、その余韻の違いを楽しむのがあきら流だ。440円。

[マグロの赤身]
青森県大畑産のマグロを使った赤身漬け。薬味にはワサビではなく、和ガラシを使い、その余韻の違いを楽しむのがあきら流だ。440円。

3店舗を切り盛りする田島氏。鮨に対する真摯な姿勢が、多くの人の心を掴む。

3店舗を切り盛りする田島氏。鮨に対する真摯な姿勢が、多くの人の心を掴む。

立喰い寿司 あきら 築地店

住所:東京都中央区築地4-7-5 築地KYビルB1F

電話番号:080-4126-3538

営業時間:12:00~15:00/17:30~22:00

休業日:不定休

立喰 鮨となり
[麻布十番]

[大トロ] しっかりと脂の乗った塩釜産本マグロの大トロ。酸味の強いふくよかなシャリと力強い味わいの大トロが口のなかでとろけていく。1,650円

[大トロ]
しっかりと脂の乗った塩釜産本マグロの大トロ。酸味の強いふくよかなシャリと力強い味わいの大トロが口のなかでとろけていく。1,650円

柔軟な発想で魅せるエンターテイメント鮨

麻布十番に店を構える「立喰 鮨となり」。本店である「麻布十番 秦野よしき」主人の秦野よしき氏が修業時代に抱えていた、「有名店の鮨を1貫だけでも食べてみたい」という思いを形にした店だ。店主を務めるのは、本店の二番手だった安藤聖氏。気さくで話しやすく、粋な会話を楽しめるが、ネタを前にすると真剣な眼差しに一転。その緩急もこの店の大きな魅力となっている。

こちらのオーダーは旬のネタ10貫をいただける「おまかせ」と、タブレット端末からネタを注文する「おこのみ」の2コースから選択が可能。仕入れは秦野氏が担当し、毎朝届けられる旬の素材に安藤氏が〆る、煮るなどの丁寧な仕事を施し提供する。シャリの酸味と塩味、魚の脂が一体化することで生み出されるとろけるような食感を「鮨の乳化」と称し、日々研鑽するお二方。様々なネタでその化学反応が楽しめる。また、シャリをこしあんで包んだおはぎなど、常識にとらわれない鮨を模索する心意気も、ぜひ体験していただきたい。

[車えび] 都内の江戸前鮨店でも珍しい、「唐子漬け」という伝統的な握り方で提供。芝えびのすり身と卵を合わせたおぼろをまとっている。858円。

[車えび]
都内の江戸前鮨店でも珍しい、「唐子漬け」という伝統的な握り方で提供。芝えびのすり身と卵を合わせたおぼろをまとっている。858円。

[のどぐろ] 「鮨の乳化」を具現化しているのが、のどぐろ炙り。シャリの酸と、あぶることで引き出したのどぐろの脂が合わさり、とろけるような食感を生む。990円。

[のどぐろ]
「鮨の乳化」を具現化しているのが、のどぐろ炙り。シャリの酸と、あぶることで引き出したのどぐろの脂が合わさり、とろけるような食感を生む。990円。

[おはぎ] 鮨となりの名物であるユニークな一品。酸味のきいたシャリにしっかりとした甘さのあんこがよくなじみ、驚きのマッチングを見せる。165円。

[おはぎ]
鮨となりの名物であるユニークな一品。酸味のきいたシャリにしっかりとした甘さのあんこがよくなじみ、驚きのマッチングを見せる。165円。

[いくら] 市場に出始めの皮目がとてもやわらかい、新いくら。この時期ならではの素材感を活かすよう、漬け込む時間などを見極めて仕上げている。880円。

[いくら]
市場に出始めの皮目がとてもやわらかい、新いくら。この時期ならではの素材感を活かすよう、漬け込む時間などを見極めて仕上げている。880円。

3安藤氏の職人としての技術はもちろん、その人柄を慕い、店を訪れる人も多いという。

安藤氏の職人としての技術はもちろん、その人柄を慕い、店を訪れる人も多いという。

立喰 鮨となり

立喰 鮨となり

住所:東京都港区麻布十番 2-8-7 M2K Holding BLD. 2F

電話番号:03-6453-9950

営業時間:11:30~60分の3部制/17:00~60分の4部制

立ち食い鮨まさ
[月島]

[穴子] 長崎県産の穴子。とろけるような食感になるまで炊き上げた、優しい味わいの一品。最後に炙って、香りを引き出すことで完成する。

[穴子]
長崎県産の穴子。とろけるような食感になるまで炊き上げた、優しい味わいの一品。最後に炙って、香りを引き出すことで完成する。

趣向をこらしたコースとの一期一会を楽しむ

東京で人気を博す江戸前鮨店の職人たちが、週替わりでお店に立つ “ポップアップ鮨”。そんなユニークな形態が話題となっているのが「立ち食い鮨まさ」だ。江戸前鮨の流儀を現代に再現するため、立ち食いという形にこだわったという。この日つけ場に立っていたのは、日本橋の有名店で腕を磨いている佐々木伸一氏。「ほかの職人の仕事を肌で感じたい」との思いから、時間を見つけてはこの店で腕を振るっている。

月島にある和食屋「草庵 はなれ」の間借りという形で、週末だけ営業をしているこの店で提供しているのは、8,800円のコースのみ。約2週間に1回コースの内容は変わるが、毎回のテーマが面白い。「北海道フェア」や「九州スペシャル」などの産地を限定したものや、プリン体の高いネタを集めた「プリン体スペシャル」など、他にはない趣向を凝らしたものを提供する。お酒の持ち込みが自由なこと(持込料200円)もうれしいポイント。自分好みの酒と鮨のペアリングを探すのも、また一興だろう。

[アジ] 鹿児島県産のアジ。塩で〆て寝かせる江戸前鮨の伝統技法が光る。旨みが引き出され、まろやかになったアジは、多くの人を魅了する。

[アジ]
鹿児島県産のアジ。塩で〆て寝かせる江戸前鮨の伝統技法が光る。旨みが引き出され、まろやかになったアジは、多くの人を魅了する。

[太刀魚] 身をしっかりとあぶって提供する太刀魚。赤酢をベースに3種類の酢をブレンドしたまろやかなシャリと、太刀魚の脂が相性抜群。

[太刀魚]
身をしっかりとあぶって提供する太刀魚。赤酢をベースに3種類の酢をブレンドしたまろやかなシャリと、太刀魚の脂が相性抜群。

[トロタク] トロとたくあんを混ぜたトロタク。突先という、濃い味が特徴のマグロの部位を使うことで、たくあんに負けない味わいが楽しめる。

[トロタク]
トロとたくあんを混ぜたトロタク。突先という、濃い味が特徴のマグロの部位を使うことで、たくあんに負けない味わいが楽しめる。

3様々な店の職人と一緒に鮨を握ることで、大きな刺激を受けているという佐々木氏。

様々な店の職人と一緒に鮨を握ることで、大きな刺激を受けているという佐々木氏。

立ち食い鮨まさ

立ち食い鮨まさ

住所:東京都中央区月島1-8-1 アイマークタワー 1F

営業時間:2022年10月現在、土・日曜日のみの営業
     営業時間は店舗インスタグラムから確認のうえ、要予約。@stand_up_eating_sushi

※2022年11月1日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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