TOP MAGAZINE特集 人と人とのつながりを広げる 雑談力を磨く

人と人とのつながりを広げる
雑談力を磨く

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日常的なコミュニケーションや人間関係の中で潤滑油となってくれるのが雑談だ。
誰とでも気軽に話せて打ち解けることができれば、ストレスなく人間関係を築くことができる。
ビジネスシーンでも、ちょっとした雑談から新たなアイデアが生まれることが多い。
多くのメリットを持つ雑談力に磨きを掛けよう。

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雑談がうまい人には多くの人やチャンスが集まる
活用しないのはもったいない

あなたの周囲に「あの人と話していると楽しい」「なぜか話しかけたくなる」「ずっと話していたい」と思う人がいたら、その人は雑談の達人だ。
雑談力を磨くコツを、コミュニケーションの専門家・野口敏さんに伝授してもらおう。

PROFILE

話し方教室TALK&トーク主宰 野口 敏さん

話し方教室TALK&トーク主宰 野口 敏さん

「今日習った人が今日うまくなる」をモットーに、東京、大阪、ZOOMでコミュニケーション講座を開催し、全国から参加者が絶えない。シリーズ累計120万部を突破した『誰とでも 15分以上 会話がとぎれない!話し方66のルール』(すばる舎)をはじめ、著書多数。

話し方教室TALK&トーク
http://www.e-0874.net/

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雑談とは相手と信頼関係を結ぶためのツール

「好かれる人、信頼される人は、たいてい雑談がうまい人。誰とでもすぐに打ち解けて話ができるようになると、行動範囲がグンと広がり、たくさんの人やチャンスが集まってきます」と野口敏さんは強調する。

そもそも、雑談とは何だろうか。

「雑談は、会話の入り口。話し相手とのコミュニケーションを促進させ、信頼関係を結ぶためのツールです」

雑談力を磨けば、プライベートでは豊かな人間関係を築くことができる。ビジネスシーンでは、ふとした会話からアイデアが生まれ、チャンスにつながることも多いそうだ。

しかし、中には雑談に苦手意識を持つ人がいる。そんな人は、どうすればよいのか。

「雑談とは本来、難しいものではありません。なぜなら、あなたが体験し、感じたことを表現すればよいからです。雑談が得意でないと感じている人も、ちょっとしたポイントさえ押さえれば、すぐに上達しますよ」

スキルアップの第一歩は、自分が〝伝える〟ことより、話す相手の気持ちを理解して〝共感〟することだという。

「雑談を、うんちくや知識をひけらかすことだと誤解している人がいます。しかし、それだけでは会話が長続きしませんし、話も広がっていきません。あなたの話から私はこう感じたと、自分自身の言葉で話すことが大切です」

〝感情をキャッチボール〟して互いの距離をグッと縮める

「雑談では、言葉とともに、お互いの〝感情をキャッチボール〟して伝え合うことが、とても重要です」と野口さんは力説する。

人は誰しも、自分の話に共感してもらえると、相手に好意を抱くようになるからだ。温かい心のこもったキャッチボールを繰り返すことで、距離がグッと縮まり、親近感が高まっていくという。

こうして気持ちが通じ合うと、脳内で幸せな気分になるホルモンが分泌され、ストレスが減り、メンタルが整うメリットも得られるそうだ。

  • 雑談は人と人をつなぎ、新たな人間関係を築く

    雑談は人と人をつなぎ、新たな人間関係を築く

〝自分ネタ〟を盛り込みながら頭の中に映像が浮かぶように

「雑談を、天気や時事ネタなどから始める人は多いですが、特に親しくない人が相手だと話は尻すぼみに終わりがちです。そんな時には、ほんの少しの〝自分ネタ〟や〝チャーミングな自虐ネタ〟など、自分自身の人柄がにじみ出るエピソードを付け加えると、相手はあなたのことをもっと知りたいと思うようになり、会話が弾みます」と野口さん。

「ただし、一方的にまくしたてるのはNG。ポイントはセンテンスを短く、そして〝間(ま)〟をおきながら話すことを心掛けてください」

この二つを意識すると、聞いている人は頭の中で話のシーンを映像化しやすくなるという。

「想像力が刺激されると、次から次へと話のネタが湧いてくるもの。話し方のお手本は、落語家です」

確かに、落語の名人の話を聞いていると、町並みや登場人物が、まるで映画を観ているように頭に浮かんでくる。

一方、話を聞く時にもコツがあるという。

「聞き上手の人は、ひたすら傾聴するのではなく、話をしている人に共感しながら感情を込めた相づちを打ちます。相づちは『へー』『えーっ』『おおー』など、シンプルなものでOKです。これによって、話し手と聞き手の脳の同じ部分を同時に働かせるスイッチが入り、お互いの感情を理解し、共感し合い、信頼できるようになるのです」

シンプルな言葉の相づちであれば、どんな反応を返そうかと考える必要もないので、これならハードルも低くすぐに実践できそうだ。

雑談力を高めるカギは自分をオープンにする心構え

人見知りや内気な性格の人はどうしたらよいだろう。

「しっかり顔を上げることを心掛けましょう。まずは自分の顔を見てもらうことが人間関係の始まりです。それだけで相手から声が掛かります。自分から話しかけるのが苦手なら、相手から話しかけやすくなるよう振る舞いましょう。顔を見せ、視線を合わせれば、無理なくよい関係が作れます」と野口さんは助言する。

人とよい関係を作るコツは、他人に壁を作らないこと。雑談力を高める最大のカギは、まずは自分自身をオープンにする心構えにあるということだろう。

あなたの雑談力をチェック!

自分に当てはまる項目にチェックを入れよう。

  • あなたの話はどちらかというと、知識よりもエピソードが多い
  • 話す時、一気に話をしないで、相手の反応を見ながら話す
  • 話す時、失敗を隠さず、チャーミングな自虐ネタも話す
  • 話を聞く時は、理解するより、相手の感情を読み取ろうとする
  • 話を聞く時は、黙って聞くのではなく、しばしば相づちを打つ
  • 雑談の時は、クールに対応するより、気持ちのこもった反応をする
  • 雑談の時は、できるだけ相手と目を合わせるようにしている
  • 相手と目が合ったらすぐに、にっこりと笑顔が作れる
  • 雑談は、情報交換よりもお互いを知ることの方が重要だと思う
  • 雑談は、時事ネタより自分や相手に関する話が盛り上がると思う

チェックの数を確認したら、下記の野口さんからのアドバイスを確認しよう。

野口さんからのアドバイス

チェックが5個以下

ちょっと雑談力不足

親しい人とは話せるけれど、初対面の相手や大勢の人がいる中ではうまく話せなかったり、どうにも会話が空回りしたりするタイプ。今回の記事で紹介した雑談のコツを身に付けて、より豊かな人間関係を築いてください。

チェックが6~9個

雑談力はまだまだ伸びしろあり

雑談がそこそこ得意で人付き合いがうまいタイプ。人の懐に飛び込むワザや世代が違う人とも会話を盛り上げるコツを身に付ければ、さらに行動範囲が広がって出会いも豊かになっていくでしょう。

チェックが10個

もはや雑談力は達人級

誰とでもすぐに打ち解けてスムーズに会話ができるタイプ。あなたの周りは、さわやかで気持ちのよい雰囲気に満ちているのでは。自然にたくさんの人やチャンスが集まってくることでしょう。

日々の暮らしでの雑談ポイント

友人・知人、夫婦、親子など、プライベートの場でも雑談は大切なコミュニケーションツール。
気持ちの触れ合いを大切に、温かな人間関係を築こう。

配偶者の実家で会話が途切れて沈黙が……

共通の知人(妻)の話をすれば
会話が盛り上がる

 こういう時の話題のセオリーは、“共通の知人”。この場合は、妻の話をすればよい。失敗がないのは、まずほめること。具体的に、「彼女はメキシコ料理がうまくて、この前作ってくれたトルティーヤは絶品でした!」などと言うと会話が広がりそうだ。そうすれば妻の親も「メキシコ料理?? そんな料理を作るなんて、全然知らなかった!」と言うかもしれない。

打ち解けた関係であれば「ただ、最近はソースの辛味が増してきて、なかなかハードになってきています(笑)」など冗談めかしてもOK。

共通の知人(妻)の話をすれば会話が盛り上がる

妻に「あなたは話を聞いてくれない」と言われてしまう

しっかりリアクションし
気持ちを受け止めて

ちゃんと聞いているつもりなのに「話を聞いてくれない」と言われるのは、心のある反応をしていないから。まずはしっかりリアクションを。例えば、「職場で同僚にいやなことを言われた。どうしたらよいと思う?」といった愚痴が出たら、絶対に否定しないこと。「君にも問題があるのでは」などと言ったら、もう口をきいてもらえない。「上司に相談したらよい」と単なる正論を返すのもダメ。妻は解決策を求めているのではなく、気持ちを吐き出したいだけの可能性が高いので、「それは大変だね」など、思いを受け止めることから始めよう。

しっかりリアクションし気持ちを受け止めて

長時間、親しくない親戚と一緒にいなくてはならない

相手が話しやすそうな話題に
少しの“自分ネタ”を

この場面でも「共通の知人」はよい話題だ。例えば法事であれば、故人。「とても野鳥の好きな人でいつも山に行っていましたね」「よく将棋の相手をしてもらいました」など具体的なエピソードをあげると、話しやすくなるだろう。天気や季節の話は万人に共通の話題だが、それだけではなかなか話が続かないので、そこに「私は暑がりなので5月に入ったら冷房をつけてしまうんです」といったほんの少しの“自分ネタ”を加えると、相手も「えーっ、私は7月まではクーラーはつけないと決めてますよ」などと雑談がふくらみやすくなる。

相手が話しやすそうな話題に少しの“自分ネタ”を

初めての集まりに参加する時緊張してしまう

まずはスタート時間より早めに
会場に着くこと

時間ギリギリに会場に着くと、すでに人の輪ができてしまっていて、話に入りにくい状況になってしまう。できれば集合時間の15分くらい前に会場に入って、しっかり顔を上げ、集まってくる人たちに視線を向ける。すると、自然に目が合う人が出てくるので、「こんにちは」「こんばんは」と明るく声を掛けよう。

まずはスタート時間より早めに会場に着くこと

趣味のサークルにどうしても苦手な人がいる

無理に会話せず、
必要最低限の会話で済ませる

人は“苦手”という感情を持つことはよくないことだと無意識に決めつけている。たまには嫌悪感や苦手意識を持つ自分を許してもよいのではないだろうか。どうしても話さなくてはならない時は、無理せず、必要最低限の会話だけして、その場を立ち去るなどしてもよいだろう。これも一つの雑談のスキルだ。

無理に会話せず、必要最低限の会話で済ませる

マンションのエレベーターで知らない住人と乗り合わせた時

何らかの声掛けや
あいさつをしてみる

気まずい雰囲気になるのは、双方が思い切り相手を拒絶する雰囲気を出しているから。後から乗り込んだら、「こんにちは」と軽くあいさつをしよう。すると相手はあいさつや会釈を返してくれるだろう。これだけでエレベーターの中が随分穏やかな雰囲気になる。知らない人と一緒に乗り込む時は「何階ですか」と声を掛けるのもよい。逆に「何階ですか」と聞かれたら「○階です。ありがとうございます」と返そう。間違っても知らん顔で自分の階のボタンだけを押すようなことがないように。

何らかの声掛けやあいさつをしてみる

ビジネスシーンでの雑談ポイント

ビジネスシーンでの雑談はアイスブレイクとして大いに活用できる。
本題に入る前の時間がギクシャクした雰囲気にならないよう、シーン別の対処法を紹介する。

自分の知らない話題だと会話に興味が持てない

相手を主人公にして
そのシーンを想像してみる

例えば、知識も興味もないゴルフの話になったら、相手を主人公にして、どのように楽しんでいるのか、頭の中で映像化してみるのがよいだろう。何をきっかけに始めたのか、どこで道具をそろえるのか、何時頃に出発するのか、家族は見送ってくれるのか、ゴルフ場にはおいしい食べ物はあるのか……。シーンを思い浮かべるだけでなく、相手の気持ちまで想像してみると、質問してみたいことが浮かんでくるのでは。

つまらないと思っていた上司の話でも、想像して聞けば、少しは気持ちが分かって面白くなるかもしれない。

相手を主人公にしてそのシーンを想像してみる

若い社員に何を話せばよいのか分からない

チャーミングな自虐ネタを話せば
相手の好感度がアップすることも

失敗談を話すとなめられる、と思っている人は多い。しかしたいていの人は人生のエピソードの半分は失敗や至らなかったことが占めている。失敗談を話せばエピソードが2倍になるのだから、語らないのはもったいない。自虐ネタをチャーミングに披露すれば、好感度も上がるかもしれない。例えば「僕はこれまで断固として発熱タイツをはかなかったんだけど、ある日はいてみたら、これが実に気持ちよい。一体今まで僕は何と戦っていたのだろう」……こんな話をすれば、相手の緊張感も和らいで、会話しやすい雰囲気が生まれやすくなる。

チャーミングな自虐ネタを話せば相手の好感度がアップすることも

同僚が極端に無口でコミュニケーションが取れない

相手の気持ちをくんで
段階を踏んで会話する

本当に口が重い人は「できれば放っておいてほしい」と思っていることが多いので、はじめのうちは「午後から雨が降るらしいから、傘が必要だね」など、簡単なことだけ話してさっと切り上げる、を繰り返してみよう。

話しかけても困った顔をしなくなったら、自分に関わるエピソードを話してみるのはどうだろう。例えばお互い子どもを持つ父親同士だったら「大学生の娘が、なんで学生には有休がないのって言うんだよ。パパはあるのに不公平だって。こんな時、どう答えたらよいと思う?」とか。

相手の気持ちをくんで段階を踏んで会話する

パーティーの自己紹介で、どうしたら印象付けられるか

肩書ではなく
エピソードが心に残る

あなたがどんなキャラクターなのかがよく分かる自己紹介こそが印象に残る。職業や年齢、出身地といった肩書だけの自己紹介は、すぐ忘れられてしまう。あなたがどんなことを体験し、何を感じたかなど、人柄や暮らしぶりが分かるエピソードがよい。例えばこんな自己紹介はどうだろう。「私は家族4人と1匹の犬と暮らしています。この犬がどうも私のことを自分より目下だと思っているらしく、家に帰るとすごい勢いで吠えてきたりして。そういうわけで、家では“5番目の男”って呼ばれています」

肩書ではなくエピソードが心に残る

もう何を話せばよいのか悩まない!話のネタのみつけ方

毎日のちょっとした感情を書きとめよう

雑談のネタは自分のエピソード。エピソードには感情が伴う。誰でも毎日「ちょっとムッとした」「ちょっと悲しかった」「ちょっとうれしかった」という感情が湧き上がる瞬間がある。「中の人と目が合ったのに、エレベーターが目の前で閉まった」「職場がフリーアドレスになったら、部下が誰も自分の隣に座らない」「今日は一度も赤信号に引っかからなかった」……。そんなちょっとした気持ちを書きとめておくと、雑談ネタとして思い出しやすくなるのでおすすめだ。

“毎日していること”は話のネタの宝庫

毎日あなたが行っていることの中には、話のネタが眠っている。例えば「朝起きる」だけでも「毎朝ものすごく眠い」「目覚まし時計が鳴る前に目が覚める」「愛犬が起こしてくれる」「朝起きてすぐに揚げ物が食べたくなる」など、ちょっとした自分ネタを話題にすれば、よい雑談が始まる。

初めての経験をするチャンスは逃さない

驚くような経験でなくてもよい。一見ムダに見えることでも、面白がって行動を起こしてみよう。新発売のお菓子を買ってみる、知らない駅で降りて商店街を歩いてみる、初めての店に入ってみるなど、ちょっと気になって試してみたことから新しい話のネタが生まれるかもしれない。

※2024年4月2日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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