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これぞ極上の大人趣味!オペラの魅力

ISSUED | 2019.03

 

これぞ極上の大人趣味!オペラの魅力

皆さんはオペラに対してどんなイメージをお持ちだろうか。
チケットが高い…、上演時間が長い…などの理由でとかく敬遠されがちなオペラだが、ひとたび体感すれば病みつきになること間違いなしのエキサイティングな魅力がたくさん詰まっている。
題して〈究極の大人の楽しみ〉――実はこんなに面白い、オペラの魅力を探ってみよう。

Text_KUMIKO ASAOKA

世界をつなぐエンターテインメントオペラの楽しみ方

シーズン中、毎夜劇場でオペラが上演されるヨーロッパでは、観劇は日常の楽しみの一つだ。
日本でも近年は海外歌劇場の来日公演や日本のオペラ団体や劇場・ホールのプロデュース公演など上演回数も増えており、気軽にオペラを楽しめるようになってきている。オペラを鑑賞する際のポイントや、まずはどのような作品を選んだら良いかなどの情報をお伝えしよう。

豪華絢爛、スケールの大きさが何よりもオペラの魅力だ。舞台美術・衣裳・照明などのすべての要素が相乗効果を生みだし一つの華麗な“総合芸術”のかたちへと昇華される。

〝総合芸術〞オペラの醍醐味

 日本語で歌劇と呼ばれるオペラ。幸いにも、日本には「宝塚歌劇」というものが存在するので、ヨーロッパで生まれたオペラというものには親しみがなくとも、歌劇とは…、舞台の下の方でオーケストラが奏でる音楽にのせて、舞台上の歌手たちが歌を主体に芝居を進めていく劇だということは想像がつくだろう。演劇では台詞は言葉で語られるものだが、オペラでは台詞のほとんどが歌によって紡がれるものと思えばわかりやすい。

 そして、〝宝塚〞の舞台がそうであるように、オペラもまた、舞台全体を彩る美術、衣裳、そして照明など、これらすべてが相互的な力を発揮し、最高のレベルにまで高められた一つの総合的な芸術のかたちだ。そして、それこそがオペラというものの魅力なのだ。


オペラの誕生と歴史

 オペラは16世紀後半から17世紀の初頭にかけて、イタリアのフィレンツェで誕生した。役者が台詞を語る合間に、合唱隊が歌で登場人物の心理描写や状況説明(いわゆるト書き)を語り継ぐという古代ギリシャ時代に上演されていた神話劇や悲劇などがそのルーツとされる。

 一口にオペラと言っても多様なジャンルがある。というのも、18世紀後半以降はイタリアだけではなく、ドイツ、フランス、イギリスなど、ヨーロッパ各地で発展することになったからだ。ドイツでは独語、フランスでは仏語…というように、そして、お国柄や文化・歴史的背景を盛り込んだ作品が次々に誕生した。例えば、ほんの一例だが、ドイツに生まれたベートーヴェンが作曲したオペラは、ドイツ語でドイツ的な厳格な作風を持ち、かつて文明堂のCMで流れていたフレンチカンカンの旋律で有名な『天国と地獄』は、いかにもパリ生まれの作品らしく、洒脱で軽妙なオペレッタ、いわゆる喜歌劇というものだ。


大人の嗜みの最高峰

 もう一つ、オペラについてぜひ読者の皆さんに知っておいて欲しい興味深いポイントがある。それは、何世紀にもわたって代々受け継がれ、決まった演出や型を持つ能や歌舞伎とは異なり、オペラは〝演出家〞自身の解釈によって、いくらでも時代背景やストーリーの〝読み替え〞が可能だという点だ。

 すなわち、かの有名な『蝶々夫人』が台本のト書きにあるように明治時代の長崎で着物を着て登場しなくても問題は無し。15歳の芸者の蝶々さんが、ミニスカートをはいてクラブを舞台に登場しても、それは演出家の考えたコンセプトとして全く問題が無いのである。しかし、歌詞とメロディーは作曲家プッチーニが19世紀末に作曲したそのまま。そのちぐはぐさを正当化してしまう演出家のマジック、いや茶番?に付き合わされてしまうという〝知的な遊び度〞がオペラの魅力なのだ。幕が開いたらベースのストーリーとは全く異なった世界観が展開される…そんなスリリングなオペラの面白さを一度体験したら、あなたも病みつきになるに違いない。

 今や日本でも年に数回海外の一流オペラの来日公演が行われており、最高水準の舞台に出合うことも決して難しくない。そして、日本独自の常設のオペラ劇場も団体も年間を通して稼働しており、こちらもまた日本のオペラ界の粋を極めたハイレベルなものばかりだ。

 そして、ビジュアル時代の今はオペラ界も美男美女ぞろい。もはや、これだけ身近なところにあるのだから、好きな歌手目当てに行くのもよし、ついついテレビで見入ってしまうお気に入りの俳優やアーティストを応援する感覚で、ぜひオペラに足を運んでみてはいかがだろうか。


ソプラノ歌手 砂川涼子さんに聞くオペラに親しむ喜び

今や押しも押されもせぬ日本のプリマドンナとして、名実ともオペラ界のトップをひた走るソプラノ、砂川涼子さん。
彼女が歌い演じる役は、タイトルロールと呼ばれる主役級のものばかりだ。
今年7月に東京で開催される「オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World」の『トゥーランドット』でリュー役を歌う砂川さんに、オペラの魅力や醍醐味を聞いた。

PROFILE

ソプラノ

Ryoko Sunakawa

砂川涼子

武蔵野音楽大学首席卒業。同大学院修了。第34回日伊声楽コンコルソ第1位、第69回日本音楽コンクール第1位受賞。第12回R.ザンドナイ国際声楽コンクールでザンドナイ賞を受賞。藤原歌劇団や新国立劇場等各地で『トゥーランドット』リュー、『カルメン』ミカエラ、『魔笛』パミーナ、『ホフマン物語』アントニア、『ラ・ボエーム』ミミ、『椿姫』ヴィオレッタ等多数の作品に出演。確かな技術と美しい舞台姿を持ち合わせ、日本を代表するソプラノ歌手として人気を博している。第16回五島記念文化賞・オペラ新人賞受賞。藤原歌劇団団員。 

生で聴かせる〝魂の歌〞

 日本を代表するプリマドンナ。しかし、素顔の砂川涼子さんは至って物静かで穏やかな女性だ。自らも「舞台上と普段の私が別人のようだって言われるんです」と微笑む。

「オペラというのは、日常では表現することのできない激しい感情や行動を、様々な役柄を通して体験できるという面白さがあります。でも、実はオペラは大げさなドラマのようでいて、意外にもごくごく普通の人間の感情や生活に照らし合わせて捉えることができるんです。

 オペラというと、大柄な歌手たちがガラスを震わせるような声で浪々と歌っているイメージがありますが、舞台の上で私たちが出している声量は日常生活で話す感覚とそんなに変わらないですし、お芝居も、私たちが日常生活で表現しているような喜怒哀楽が描かれ、語られているんです。一人ひとりの中に共感を覚える何かがあるからこそ、オペラは聴き手の心をつかむことができるのだと思います」

 それゆえだろうか、砂川さん自身も日常生活はごく普通に、つねに心身ともにバランスの取れたごく〝普通〞の生活を心がけているという。しかし、公演期間も一公演そのものも長丁場のオペラ。稽古期間も含め一か月、時には数か月にわたり役柄への没頭やコンディションの調整が求められる厳しい仕事だ。

「そうですね。一つの公演期間が終わった後は抜け殻のような状態になってしまいます(笑)。オペラの醍醐味というのは、歌い手一人ひとりの情熱や思いがライブで直接観客の皆さんに伝わることにあるので、聴き手に〝魂の歌〞を聴かせるという思いでしょうか…、それだけに、全身全霊を込めて本番にも稽古にも臨んでいます」


7月にリュー役を歌う『トゥーランドット』について、「まだ演出のコンセプトについては全く聞かされていないのですが、演出家のメッセージを読むと、通常のハッピーエンドではない?というような示唆もあって、期待感とともにちょっとドキドキしています」と砂川さん。

思い出の役を晴れの舞台で

 沖縄県宮古島出身。意外なことに十代の頃は歌よりもコントラバスや吹奏楽に没頭していたという。音楽の道を選んだのも決してプリマドンナを目指していたのではなく、学校の先生になりたいから。砂川さんらしさが溢れ出ている。

 今年7月に開催される「オペラ夏の祭典2019-20Japan↔Tokyo↔World」の『トゥーランドット』では、ストーリーを牽引する重要な役、リューを歌う。このプロジェクトは東京2020オリンピックを控え、19年、20年の二年にわたって各国のオペラ関係者を巻き込み、東京2020文化オリンピアードの一つにも位置付けられている、祝祭的なオペラの祭典だ。主役、準主役級の役柄も世界の大歌劇場で歌うトップスターが一堂に介する。

 作曲家ジャコモ・プッチーニのオペラ『トゥーランドット』は、愛を知らずに生きてきた冷徹な姫トゥーランドットが、リューという一人の健気な女奴隷の献身的な愛の死を目の当たりにすることによって、自らも愛に目覚め、カラフという異国の王子と結ばれるまでに変化していく、というストーリーだ。召使リューは、トゥーランドットから〝 王子の名を明かせ〞と、 執拗な拷問を受けながらも、陰ながら思いを寄せる王子への愛を貫き、最後までその名を明かさず尊い愛の死という自己犠牲を選ぶ。

 このいつの時代にも通じる普遍的な愛のかたちが、今回気鋭のアレックス・オリエという世界的なオペラ演出家によってどう描かれるのかが期待されるところだ。

 実は、砂川さんにとってこのリューと言う役は、オペラ歌手として大舞台に初めてデビューした際の思い出の役なのだという。

「前回この役を演じた時は、直感で歌い切ることを大切にしていたのですが、今回はテキストをもう一度読み込んで、より彼女の心情に寄り添っていけたらと思っています。年齢やキャリアを重ねたことによって、自分自身の中でどのように思いが変わったかを感じられるのは楽しみでもありますね」


東京文化会館オペラBOX「トスカ」(2018年)で、トスカ役を演じる砂川さん
©ヒダキトモコ

プッチーニ・マジックの感動を

砂川さん曰く、プッチーニの作品は、どの演目をとっても登場人物の感情や言葉一つひとつが音楽と密接に結びついており、聴き手の心をグッとつかみ取るマジックがあるという。フィギュアスケートのBGMでもお馴染みの『トゥーランドット』のあの壮大なテーマ〈誰も寝てはならぬ〉を一度でも耳にしたことがあるならば、きっと砂川さんの言葉に共感できるだろう。

「『トゥーランドット』はお芝居としても、また十八番的なスタンダードナンバーがたくさん散りばめられているという点でも、とても親しみやすいオペラですから、初めてオペラをご覧になるという方々も、ミュージカルやオペレッタの少しだけスケールが大きいバージョンと思って、ぜひ気軽に聞きに来て頂けたら嬉しいですね」



Synopsis of Turandot 『トゥーランドット』あらすじ

 伝説時代の北京。城壁前の広場で、戦に敗れ、国を追われた王子カラフは、盲目の父王ティムールと召使リューとの再会を喜ぶ。すると、そこにトゥーランドット姫が姿を現す。カラフは一目で姫の冷徹な美しさの虜となる。カラフは姫が出す三つの謎を解き明かせば、姫が自分のものとなることを知る。
 謎解きの場面――答えが見つからなければ、死をもって報いなくてはならぬ掟。しかし、カラフは誰も答えることのできなかった三つの問いをすべて解き明かし、そして、今度はカラフがトゥーランドットに自らの名を謎として与えるのだった。もし、己の名が解き明かされるのであれば、死をもってひれ伏すと。
 召使リューは、彼の名を明かせと姫から拷問を受けるが、密かに想いを寄せていたカラフへの愛を貫き、口を閉ざす。そして、兵の剣を奪い取り、自害してしまう。
 悲しい時が去った後、カラフは姫に愛を語り、接吻する。リューが示したカラフへの愛の献身を目の当たりにし、姫の心にも変化が生じていたのだった。愛を知り、心を開いたトゥーランドットは、「彼の名は“愛”」と高らかに歌い上げる。

2016年に海外で上演されたトゥーランドットの一場面



■ 申込は以下より
・東京文化会館チケットサービス
03-5685-0650(10:00~18:00)
http://www.t-bunka.jp/tickets/

・チケットぴあ
0570-02-9999(10:00~18:00)
http://t.pia.jp

・イープラス
http://eplus.jp/t-bunka/

・ローソンチケット
0570-000-407
http://l-tike.com

END

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