伝統を受け継ぎ後世に残す 継ぎ人 匠

継ぎ人 その九

造り手の想いのバトンをつなぐ江戸商人

ISSUED | 2018.01

伊勢五本店 九代目 篠田 俊志さん

  • 伝統ジャンル | 酒小売 継承歴 | 九代目
  • 1964年東京生まれ。早稲田大学卒 業後、3年間の食品メーカー勤務 を経て、27歳で家業を継ぐ。本格 焼酎、日本酒、日本ワインに特化 した専門店として業界をリードす るひとり。

造り手の想いのバトンをつなぐ江戸商人

 その昔、徳川家康公が駿府から江戸に城を移す際、伴に江戸移り住んだ伊勢商人。伊勢五本店初代・篠田五右衛門もそのひとりであった。宝永3年(1706年)、江戸・谷中、寛永寺前に酒屋「伊勢屋五右衛門商店」を開く。

 「わたしの代になり、酒屋として大分変わりましたね。かつては寺町ということもあり、お寺にお酒を納めることが商いの中心でしたが、今はそれだけではやっていけません。時代に応じていつも変化し続けること。そうして次の世代に受け継いでいくことが、継いだ者の使命だと思っています」

 篠田さんの代になり、伊勢五本店は地酒を中心とした専門店へと姿を変えた。取引先も少ない中、新たな挑戦をした篠田さん。たまたま訪れた暖簾屋さんから取引先を紹介してもらうなど、常に人に助けられてきた。そして、〝継ぐ〞ということの本当の意味を知ることになる。

 「店を継いだときは創業者のつもりでしたけれど、先代、先々代、それよりもずっと前からのご縁が助けてくれたんですよ。長く続けていること=信用。代々守ってきた人がいたからこそ成立することなんです。また創業以来変わらないことは、従業員を大切にするという想い。従業員より早く起きて、遅く寝る。手足となって働いてくれている従業員たちこそ、わたしの宝です」

 伊勢五本店を訪れると真っ先に目に入ってくるのが、若い従業員たちが生き生きと働いている姿だ。そんな彼らが接客することでお客様も自然と笑顔になってゆく。篠田さんの想いは働く者だけではなく、訪れる人までも幸せにしてくれる。

 「ネットでなんでも便利に買えるようになりました。たった一本のお酒かもしれませんが、そこには造り手の想いが凝縮されています。それを伝えることこそが、架け橋となるわたしたち商人の仕事。特にお酒は、飲んでしまえばなくなってしまう、形が残らないもの。風景や考え方など造り手の想いを伝えた上で買ってもらう。売り手よし、買い手よし、そのためだったら商人は痩せ我慢くらいしなくちゃ!」

 篠田さんとのお酒談義はとにかく楽しい。まるで造り手が隣にいて話しているようだ。きっと、商人としてのプライド、物売りの原点がそうさせているのだろう。

  • 人財 篠田俊志

  • 匠の言葉

    「人財」
    お客様、造り手、従業員。人が居てこそ商いは成り立つ。すべての人が幸せになる商いをすることこそ、商人の原点だ。

店舗情報

伊勢五本店

  • 千駄木店
    住所 文京区千駄木3-3-13   ▶︎MAP
    電話番号 03-3821-4573
    営業時間 10:00~19:00
    日曜・祝祭日・お盆・年末年始休
    中目黒店
    住所 目黒区青葉台1-20-2 1F   ▶︎MAP
    電話番号 03-5784-4584
    営業時間 11:00~21:00
    (角打ち平日15:00~、日曜12:00~)
    火曜・祝祭日・お盆・年末年始休

    若手スタッフと、それぞれ今一押しのお酒を持って。伊勢五本店で働く従業員は皆、笑顔が印象的だ。

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