東京グルメバトン VOL.61

慈華|外苑前

発行: 最終更新日:

中華の歴史と伝統に日本の感性や四季を重ねた素材を活かす中国料理

「リストランテ山﨑」の矢島直樹さんからバトンを受け継いだのは南青山の中国料理店「慈華」の田村亮介さん。
中華の歴史を重んじながら、日本でしか表現できない中国料理を追求する。

Words_TOMOMI KATO Photographs_KIYOSHI TSUZUKI

Profile

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田村 亮介さん

1977年生まれ、東京都出身。実家が中華料理店という環境で育ち、高校卒業後、調理専門学校へ。横浜中華街「翠香園」などを経て、四川料理「麻布長江」へ。2006年に「麻布長江 香福筵」料理長、2009年に同店のオーナーシェフに就任。2019年に建物老朽化のため閉店の後、同年12月、南青山に「慈華」を開く。

 慈しむ華(中華)と書いて、「いつか」と読む。素材を慈しみ、人を慈しみ、料理を慈しむ――オーナーシェフである田村亮介さんの、そんな思いが込められた名だ。

 かつて田村さんは、四川料理の名店と謳われた「麻布長江 香福筵」で、10年間にわたりオーナーシェフを務めた。建物の老朽化のため惜しまれつつ閉店した後、2年前に開いたのが、ここ「慈華」だ。

 中国料理には、長い歴史の中で確立された調理や調味の技術がある。たとえば醤(ジャン)などの調味料で食材を覆えば、完成した料理は食材の味を軽々と超える。しかし、田村さんがつくる中国料理はそうではない。大切にしているのは“素材感”。味をつけるというよりも、「素材の背中を押すように」それぞれの食材の持ち味を最大限引き出している。

「以前は私も、いかに本場の中国料理に近づけるか、ということを重視していました。でもある時から、日本人である私が中国料理をつくる意義を考えるようになったんです。中国料理の源流を追求しつつも、日本の素晴らしい生産者の方々の魂が込もった、四季折々の豊かな食材を存分に活かしきりたい。中華の歴史と文化に敬意を払いながら、慈華でしか食べることのできない中国料理を表現したいと思っています」

 おまかせコースで供される品々は、全体の流れの中で味わいや盛り付けに緩急が工夫され、五感を楽しませてくれる。 「美味しさを提供するのは当たり前のこと。その上で、何か少しでも驚きや楽しさを感じていただけるような料理を目指していきたいですね」

前菜の一皿の中でも素材や味付けに変化をつけ、食べ進める流れにも配慮して盛り付ける。

前菜の一皿の中でも素材や味付けに変化をつけ、食べ進める流れにも配慮して盛り付ける。

RESTAURANT INFO店舗情報

  • 慈華(いつか/外苑前)
  • 慈華(いつか/外苑前)

    住所: 港区南青山2-14-15 五十嵐ビル2F▶︎MAP
    電話番号: 03-3796-7835
    営業時間: 11:30~15:00(入店13:00迄)、17:30~21:00(入店19:30迄)
    休業日: 月曜・他不定休
    URL: https://www.itsuka8.com/
※2023年5月9日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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