伝統を受け継ぎ後世に残す 継ぎ人 匠

継ぎ人 その十七

初代の教えを守り続け、丁寧な手仕事にこだわる和菓子職人

ISSUED | 2018.09

梅花亭 四代目 井上 豪さん

  • 伝統ジャンル | 和菓子 継 承 歴 | 四代目
  • 1971年東京生まれ。和光大学芸術学科卒業。1994年に家業である「梅花亭」に従事。2013年の「一級菓子製造技能」の免許獲得や2014年の全国和菓子協会「選・和菓子職」における「優秀和菓子職」認定を経て、2015年に四代目に就任。2016年東京マイスターに、同年外務省の「日本ブランド発進事業」で渡英し、和菓子の海外講演を行う。

初代の教えを守り続け、丁寧な手仕事にこだわる和菓子職人

 歴史と風情を感じられる街・神楽坂。そんな大人の街で、客足の絶えない和菓子屋がある。昭和10年創業の「梅花亭」だ。「元々は祖父が新宿で開業し、戦後は池袋で60年にわたり営業を続けてきましたが、よりよい場所を求めて2005年にこちらに移転してきました」。そう語るのは四代目の井上豪さん。

 幼少期の遊び場が和菓子の工場だったといい、小学校の頃から配達に出るなど家業を手伝いながら育った。父親が二代目として店を継いだが、井上さんが10歳の時に若くして他界したため、叔父が三代目として跡を継いだという。「二代目を早くに亡くしたことから、先代の〝食の安全〞に対するこだわりは人一倍ありましたね。そのため現在でも国産の素材を使用し、着色料にはクチナシや紅花など天然由来のものを使っています」。

 さらに、井上さんのもうひとつのこだわりが和菓子の命ともいえる餡だ。「当店の餡は和菓子の皮に合わせた23種類を豆から炊き分けています。そのぶん手間はかかりますが、丁寧な手仕事が美味しさの秘訣であり、生命線だと思っています」。季節の上生菓子は時の移ろいに合わせ、2週間という早いサイクルで入れ替わる。どれも旬の果物や花をモチーフとした、目にも楽しいものばかりだ。

 和菓子の世界においても効率化が進む現代において、これほど手間をかける背景には、初代の言葉があるという。「〝いい材料を使っていい物を作っていればお客様はついてくる〞が祖父の教えでした。その意思を引き継ぎ、美味しいものを求めるお客様に満足して頂ける和菓子を提供したいと思っています」。

 店頭に並ぶ手のひらサイズの美しい和菓子たち。その小さな一つひとつに〝手作り〞への真摯なこだわりが詰まっている。

  • 粋

  • 匠の言葉

    「饅頭」
    井上さんが迷わず描いたのは“饅頭”。「饅頭づくりには、和菓子の基本であり最も難しい包餡(ほうあん)の技術が必要なため、特別な思いがあります」。初心を忘れまいとする、井上さんの心がけが伝わる。

店舗情報

神田淡平

  • 梅花亭 神楽坂本店

    住所 新宿区神楽坂6-15 ▶︎MAP
    電話番号 03-5228-0727
    営業時間 10:00~20:00
    定休日 不定休

    梅花亭 ポルタ神楽坂店

    住所 新宿区神楽坂2-6 PORTA神楽坂1階 ▶︎MAP
    電話番号 03-3235-0808
    営業時間 10:00~20:00
    定休日 不定休

    「和菓子1個から大事に売りたい」という想いから、ショーケースを撤廃。個数に関わらず、気軽に商品を選べる嬉しい気遣いだ。

    [左]季節感が命ともいえる和菓子は、2週間ごとラインナップが入れ替わる。取材時は「すいか」や「金魚鉢」が並んでいた。
    [右]先代より受け継いできた製菓用の細工鋏。自分で研いで切れ味を保っている。

    [左]職人たちによる和菓子作りの様子が分かるよう、店内は一部ガラス張りになっている。
    [右]年間を通して店頭に並ぶ和菓子を巻物としてまとめた「上生菓子意匠集」。油絵を学んでいた井上さんならではの作品。眺めるだけで季節の移ろいが分かる。

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